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永田町の空気が変わったのは2025年10月5日の夕である。自民党の高市早苗総裁が就任後初めて本格的人事に着手し、党本部で麻生太郎元首相と向き合った。副総裁に麻生氏、幹事長に鈴木俊一氏を据える案、官房長官に木原稔氏を起用する構想が一気に現実味を帯び、初の女性宰相誕生を見据えた布陣づくりが動き出したと映る。
麻生副総裁、鈴木幹事長案が動き出す
5日夕、自民党本部前に報道陣の列が伸びた。高市氏が入館してほどなく、麻生氏が姿を見せ、両者は約1時間にわたり会談したとみられる。総裁選の終盤で票の流れを変えた麻生派の影響力はなお強く、会談の意味合いは単なる挨拶回りにとどまらない空気が漂った。
人事の軸足は党運営の要である幹事長人事に置かれた。麻生派の鈴木俊一総務会長を幹事長に起用する方針が固まりつつあり、党務の司令塔を実務派で固める狙いが読み取れる。麻生氏を副総裁に据える案も浮上し、総裁—副総裁—幹事長のラインを麻生派色で太くする布陣が形を取り始めた格好である。
鈴木氏は麻生氏の義弟にあたり、両者の近さは党内の調整力に直結する。派閥力学の復権を懸念する声も出る一方、総裁選で割れた党内を早急に束ねるには経験と関係の太さが不可欠だとの受け止めが広がる。誰に有利なのか。当面は「勝てる体制」を優先する現実主義が前面に出てきたとみられる。
官房長官に木原氏案、外交安保の手当て
政権の心臓である官房長官には、旧茂木派の木原稔前防衛相を起用する案が有力視されている。防衛省の現場を知る手堅さに加え、危機管理や与野党折衝の調整力を総理官邸に直結させる狙いがあるとみられる。高市氏の政策の柱である経済安保や成長戦略を、官房でどこまで推進できるかが試金石になる。
外相や防衛相など安全保障の閣僚ポストは、実務経験者を厚く配する方向で絞り込みが続く。党内では旧茂木派の重用観測が根強いが、現時点で確定情報はない。人事の核心は、同盟国との協調と近隣外交の安定化をどう両立させるかにある。高市氏が掲げる強い外交の実装には、顔ぶれの一貫性が欠かせない。
組閣のもう一つの焦点は、官邸と党の意思決定をどう結び直すかだ。官房長官—政調—与党執行部の連携が鈍れば、経済対策や防衛財源の設計はたちまち遅れる。官房に調整型の司令塔を置き、外務・防衛に交渉力と危機対応の経験値を重ねる。そんな「分業の明確化」が、今回の人選から浮かび上がる。
旧安倍派の処遇、総裁選組の登用、そして国会日程
党人事は7日にも固める段取りが進む。焦点は旧安倍派幹部の扱いである。裏金問題で信頼回復が途上にある中、萩生田光一元政調会長らの起用には賛否が割れる。総裁選を争った小泉進次郎農相らの処遇も見逃せず、登用の幅と配置の妙で「挙党体制」をどう示すかが問われる局面に入った。
日程面では、首相指名を行う臨時国会の召集を15日軸で調整してきたが、連立枠組みの再構築に向けた政策協議のため、ずれ込む可能性が出ている。与党内の足並みや新体制の発足時期が流動的で、官邸・党本部・与党間の調整力が早くも試される展開である。スケジュール管理は政権の実行力そのものだ。
高市氏が首相に指名されれば、日本初の女性宰相が誕生する。期待は大きいが、成功の鍵は経済と安全保障の早期の可視化にある。誰をどこに置くのか。その配置図は政策の優先順位の写し鏡だ。現時点で確認されている範囲では、党を束ねる布陣の骨格が先行し、内閣の顔ぶれは最終調整が続くと映る。
