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連立の枠組みが塗り替わる気配が濃い。自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表が2025年10月20日午後、東京都内で会談し、連立政権合意書に署名する段取りが進んでいる。維新は入閣を見送り当面は閣外協力とし、21日の首相指名選挙で高市氏に投票する構えだ。女性初の首相誕生が現実味を帯びる局面である。
静かな午後、署名へ向かう空気
都心の空気は張り詰めている。双方の幹部が足取りを速め、合意の文案に最後の手入れを施す光景が浮かぶ。複数の報道は20日午後の会談と署名を伝え、維新は「政策連携は進めるが入閣はしない」との立て付けで動くと報じている。政権の重心をどこに置くのか、静かな緊張が会場の外にも広がっている。
一方で、維新は党内手続きを重ねて最終判断に備える。会談に先立つ同日、国会内で緊急役員会と両院議員総会を開き、意見集約を図る段取りだとみられる。19日には大阪市の党本部で常任役員会が開かれ、交渉の進捗が共有されたという。現時点で確認されている範囲では、異論は大勢にはならず、執行部への一任が軸となっている。
政策面では、維新が18日に自民側へ示した「12本の矢」がベースにある。行政・規制改革、税や成長戦略、地方分権の加速などを束ねた要望で、合意書はこれらの優先順位や工程の刻み方をどう書き込むかが焦点だ。期限を区切った実行点検や合同の作業部会設置など、実務の器を整える作業が詰めの段階に入っていると映る。
投票計算が動かす「女性初」への現実味
21日に予定される首相指名選挙では、衆参両院での投票結果がすべてを決める。維新が高市氏に投票へ回れば、票読みは一気に固くなる。連立枠外からの協力であっても、首班指名での足並みは新体制の立ち上げを後押しする。女性初の首相誕生は歴史の節目を刻む出来事であり、国会の一票一票に重みが増している。
他方で、与党間の力学は揺れている。高市総裁は10月上旬の記者対応で、公明党との政策協議について「一部は歩み寄りが進んだが、なお時間がかかる論点が残る」旨を示唆した。自公関係の行方をにらみつつ、維新との政策接続点を厚くする動きが並行している構図だ。多数形成の要はどこに置くのか、与党の計算は続く。
野党からの視線も厳しい。閣外協力は合意点が曖昧だと揺れやすい。他方で、柔軟な距離感は政策実装のスピードを上げる可能性がある。合意書が数値目標や期限、評価の物差しをどこまで明確にするかが試金石だ。採決ごとに是々非々を貫くのか、包括的な合意で先回りするのか。新体制の統治スタイルが問われている。
交渉の芯は政策にある
維新の「12本の矢」が投げかけるのは、目先の連立算術ではなく、政策で競い合う政治の姿だ。既得権に切り込む規制改革、地方へ権限と財源を移す分権、成長と分配の設計変更――どれも痛みを伴う。だからこそ、合意が実行の力に転じるには、進捗の見える化と国会・内閣の両輪でのフォローが欠かせないとみられる。
高市体制の発足後、首相官邸と与党の意思疎通は一段と重要になる。政策協議のテーブルで妥結した案件を、予算編成と法案作成に迅速に落とし込めるか。工程の遅れが生じれば、閣外協力の張力は一気に弱まる。逆に、成果が早期に可視化されれば、次の選挙をにらむ両党にとって合理的な協力形態として定着しうる。
「信頼関係は相当深まった」との受け止めも一部にあるが、最終局面では人事やポストに関する解釈の違いが露呈しやすい。合意書の文言は政治の現場で生きるのか、それとも棚上げの約束に変わるのか。20日の署名が実現すれば、ただの儀式ではない意味を持つ。紙に宿すのは、政権運営の覚悟そのものだといえる。
