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イスタンブールの交渉会場で、代表団が席を離れたとの報が走った。タリバン暫定政権のムジャヒド報道官は2025年11月8日、パキスタンとの和平協議が決裂したと明言しつつ、停戦の効力は続くと強調した。前日の7日にはパキスタン側も決裂を認め、攻撃がなければ停戦は維持されるとの立場を示している。脆い静けさが、緊張の国境に細く張り渡されている。
交渉はなぜ止まったのか
ムジャヒド氏は2025年11月8日、決裂の理由として「パキスタン国内の安全をアフガニスタンが担うよう求められた」と説明した。自国の「能力を超えた要求」だと退けたうえで、停戦については「これまで違反しておらず、今後も順守する」と述べた。停戦合意(敵対行為を一時停止する取り決め)は壊さないという意思表示である。
一方、パキスタンのハワジャ国防相も2025年11月7日に、イスタンブールでの協議が決裂したと表明した。ただし「アフガニスタン側からの攻撃がなければ停戦は維持される」と言及し、衝突回避の余地を残した。協議の現場が閉じても、軍事的な自制は続けたいというメッセージが重ねられた格好だ。
ただ、協議が始まった2025年11月6日には両軍が国境沿いで短時間の銃撃戦を交わしている。10月にカタールのドーハで結んだ停戦合意は生きているものの、最前線の現場では偶発的な火線が走りうる。政治の言葉と国境の現実の間に小さな段差が残ったままだ。
焦点は「越境攻撃」と検証の仕組み
交渉の核心は、パキスタンが訴える越境攻撃の抑止にある。パキスタン外務省は2025年11月7日の会見で、アフガニスタン側に「根拠資料に基づく正当な要求」を提示したとし、武装勢力が隣国領から活動しないよう「検証可能な仕組み」の構築を求めた。合意を紙の上だけで終わらせないための監視手当てが要る、という理屈だ。
これに対しアフガニスタン側は、他国の国内治安にまで責任を拡張する要求だとして難色を示す。主権や治安能力の線引きが曖昧になるほど、合意履行の現場で摩擦は増えやすい。国境が長く山岳地帯も多い環境では、行為の発生源を特定し、誰が止めるのかを明確にすること自体が難題になる。
しかも停戦を口にしながら小競り合いが起きる現実は、双方の国内世論にも影響する。交渉を急ぎたい外交の論理と、越境攻撃に敏感な治安の論理がせめぎ合うためだ。だからこそ、実地で機能する監視や通報の連絡網、違反時の手順といった「細部の合意」が鍵になると見られる。
仲介役トルコの動き
2025年11月8日、トルコのエルドアン大統領はアゼルバイジャンのバクーでパキスタンのシャリフ首相と会談し、協議が実を結び恒久的な安定につながることへの期待を伝えた。トルコは今後も和平プロセスに関与するとしており、停戦維持のための場づくりを続ける構えだ。対話のテーブルが揺れるとき、第三者の「場の管理」は効果を持つ。
トルコはカタールと並ぶ仲介役として、交渉の継続性を担ってきた。関係当事国の双方と安全保障・経済で太いパイプを持つことは、連絡調整や合意の実装を進めるうえでの資産である。合意文の文言だけでなく、現場の境界線で動く仕組みを重ねる作業に、アンカラの役回りは残る。
今回の「決裂と停戦維持」という二重の状態は、拙速な破綻を避けながら、合意運用の細部を詰め直すための時間を確保する狙いもにじませる。国境での偶発的な衝突を封じる具体策が積み上がるかどうかが、次の指標になるだろう。
国境の検問所では、慎重なやり取りだけが続き、次の合図を待っている。