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薄曇りの永田町に、静かな緊張が漂う。自公連立から公明党が距離を置くと伝えられ、2025年10月21日に召集される見通しの臨時国会で、首相指名選挙が国政の針路を決める局面を迎える。自民党の高市早苗総裁が選出される公算が大きいとみられる中、将来の首相を狙う国民民主・玉木雄一郎代表が選ぶべき道は何か。政局の力学と政策の現実から、その最適解を描く。
首相指名の一日、票の行方と呼吸
首相指名選挙は衆参両院の本会議で行われ、衆院の優越が最終判断を左右する仕組みだ。21日の指名は、高市総裁を軸に与党・保守系の多数確保が焦点となる見通しである。公明の離脱観測が膨らむなか、与党は会期運営と採決戦略を緻密に積む必要があり、一票の重みが増していると映る。
一方、野党は対抗馬の一本化を模索するが、安保やエネルギーをめぐる立場の差は根深い。政策の溝を抱えたままの「数合わせ」は短命に終わる、という警戒感が永田町に広がっている。玉木氏はこの空気を読み誤らず、拙速な合従連衡を避ける判断が要る局面だといえる。
鍵を握るのは「どこで距離を取り、どこで乗るか」という呼吸である。閣外に身を置きつつ、個別法案で票を積み上げる芸当ができるか。首相指名での態度と、直後の補正や重要法案での立ち回りが、玉木氏の将来像を左右する構図が浮かぶ。
玉木が握るべき軸足は「政策先行」と「清潔さ」
最適解の第一は、旗を政策に固く結び直すことだ。具体的には、可処分所得を押し上げる実効策の先行実装である。いわゆる「年収の壁」対策の恒久化・簡素化を与野党の枠を越えて束ね、賃上げの持続と家計の再分配を同時に進める。成果が家計に届けば、「政策本位」を掲げてきた同氏の言葉に血が通う。
第二は「政治とカネ」への先頭打者である。寄附・パーティーの透明化、収支報告のリアルタイム化、第三者監査の常設化など、骨太のパッケージを自ら書き上げ、与党を巻き込む形で可決に導くべきだ。ここで妥協を避ければ、清潔な改革志向というブランドが固まり、短期の支持率でなく中長期の信頼を獲得できる。
第三はエネルギーと安保の現実主義だ。原子力の安全確保と移行戦略、再エネの系統強化、同盟抑止と経済安全保障の整合性。理念の対立を超え、費用と時間の試算を伴う「落としどころ」を提示することが肝となる。ここでの設計力こそ、将来の政権担当能力の試金石と映る。
最短距離で成果を取る「閣外協力」の設計図
当面は閣外協力にとどまり、個別案件での合意形成に資源を集中させるのが得策である。第一段として、家計直撃の課題に絞った横断的合意を積む。第二段として、税・歳出の見直しや地方財政の機動化とセットで制度改正を進める。第三段として、ガバナンス改革を他法案の采配とリンクさせ、野党全体の接着剤にする。
この設計なら「閣外で成果を出す」という物語が描ける。与党が少数運営で行き詰まれば、不信任や内閣改造の節目で交渉力は跳ね上がる。そこで初めて「入るか、入らないか」を再評価すればよい。安売りを避け、政治的な配当を最大化するための時間管理が勝負どころとなる。
他方で、野党間の大同団結にはリスクも潜む。立場の差を覆い隠す妥協は早晩ひずみを生むため、共闘はテーマごとの限定連携にとどめるのが現実的である。争点の選別と順番、撤退の条件まで明文化しておけば、破綻を避けつつ成果を積む道筋が見えてくる。
「次の首相」へのロードマップ
指名選挙の態度は出発点にすぎない。年末までの国会で三つの可視化された成果を残し、年明け以降の通常国会で予算と改革パッケージを貫く。選挙モードに入る前に「家計の安心」「清潔な政治」「現実的な安全保障」を三本柱として固定化できれば、首班指名で名を呼ばれる日程が現実味を帯びる。
結局のところ、玉木氏の最適解は「焦らず、しかし遅れず」である。旗は政策に、足場は閣外に、成果は家計と透明性に。21日の一票は、その物語の第一章にすぎない。永田町のざわめきの中で、次の頁をどう書くかが問われている。
