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タイムラインに、軽い言い回しで重たい影が差す。2025年10月18日、X上の日本語アカウントに「高収入の仕事あり」「募集担当者も同時募集」「紹介費用も十分支給」と並ぶ投稿が複数流れ、連絡先はテレグラムへ誘導という文言が目立った。海外拠点の特殊詐欺に人を巻き込む“入口”と重なる表現が散見され、見過ごせない兆しが浮かぶ。
広がる誘い文句、静かに増える“入口”
投稿には「年齢や性別不問の高額バイト」「時給5千円も夢ではない」「月100万円以上」といった文句が並び、最後は「DMをお待ちしております」で締める型が多い。現時点で確認されている範囲では、仕事内容の説明は薄く、事業者名や所在地、労働条件の詳細は見当たらないケースが目立つ。誘導先としてテレグラムを示す投稿も散見される。
「徹底した個人情報保護と安全対策」を強調する一方、応募から連絡までを閉じたメッセージ空間で完結させる設計が際立つ。募集担当者自体を募集するという二重の“入口”も見られ、紹介料の支給を前面に出す手口は、末端の役割を次々補充する狙いと映る。楽に稼げるという語り口と、実体の希薄さの落差が不自然である。
この構図は、SNSで“受け子”“かけ子”などを募る常套と重なる。匿名の連絡先だけで話が進み、身元確認や契約の説明が後回しになる流れは、特殊詐欺の実行役へと滑り込ませる定型に近い。投稿の増加は、実体のある求人需要の拡大ではなく、実行要員の回転を早めるための裾野づくりとみるべきだろう。
公的機関の警告が示すリスク
外務省は2025年2月20日、「特殊詐欺事件に関する注意喚起」を発出し、闇バイトに応募した人が海外で“かけ子”や“受け子”として加担させられ、現地警察に拘束または保護される事案が続いていると強く注意を促した。未成年が巻き込まれた例や、組織内部で暴行を受けるケースにも言及し、安易な応募を戒めている。
同注意喚起は「海外であっても犯罪行為の罰は免れない」と明記し、意図せず加害者にならないための慎重な行動を求める。華やかな言い回しで渡航を促す誘いには距離を置き、金銭や身分証の預け入れ、メッセージアプリのみの連絡といった条件が出た時点で退くことが肝要である。連絡手段や移動手配を相手側が一手に握る構図自体が危険信号だ。
実際、こうした勧誘は、応募者の孤立を狙い、相談を遮断する設計を帯びる。現地でのトラブルは自力での解決が難しいうえ、組織は応募者を保護しないことが多いとみられる。迷った際は、警察や公的窓口に早めに相談し、SNS上の勧誘は記録を残した上でブロック・通報へと進む判断が安全である。
数字でみる現在地――被害の増勢と手口の変化
警察庁が2025年10月2日に公表した暫定値では、8月末時点の特殊詐欺認知件数は1万7,662件(前年同期比+5,255件、+42.4%)、被害額は831.4億円(+479.7億円、+136.4%)と大幅増である。水面下の勧誘が可視化されるのは一瞬だが、数字は長く重く、日本社会の足元で何が起きているかを静かに物語る。
手口面では「ニセ警察」を名乗る詐欺の比率が依然高く、認知件数は6,577件で全体の37.2%、被害額は563.7億円で67.8%を占めると示された。暗号資産の送金による被害の増加傾向も指摘され、連絡手段の匿名化と送金手段の多様化が組み合わさる構図が浮き彫りとなる。可視化しにくい被害が増える土壌が広がっている。
SNS上の“高収入バイト”は、この増勢の入り口になり得る。募集は短い言葉で不安と欲望を同時に突き、メッセージアプリへと人を誘う。そこから先は、役割と手順が機械的に割り振られ、使い捨ての実行役に落とし込まれる危険がある。タイムラインの片隅の違和感を、見逃さない感度が求められている。