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東京電力ホールディングスが、柏崎刈羽原発の再稼働と歩調を合わせて新潟県に総額1000億円規模の基金を提案する方向で調整していることが明らかになった。利益を原資に脱炭素やデジタル化、人材育成などの地域施策を後押しし、地元理解を得る狙いだ。小早川智明社長は2025年10月16日に県議会で説明に臨む見通しで、電力と地域の関係を組み替える一手となるかが焦点となる。
1000億円規模の基金案、地元に投じる狙い
秋の潮風が吹く柏崎の町で、再稼働の重さが改めて浮かぶ。2025年10月8日夜、東京電力HDが新潟県に総額1000億円規模の基金を提案する方向と伝わった。原資は柏崎刈羽で得る利益とされるが、同社は「当社が発表したものではない」とコメントしており、正式発表はこれからと映る。情報が先行するなかでも、地域の視線は具体像に集まっている。
基金の使途は脱炭素やデジタル化、新事業育成、雇用創出などの地域振興が想定される。柏崎刈羽で生まれた電力の多くは首都圏に流れ、新潟では使えないという不満が根強い。地元の経済的メリットを見える形にすることで、賛否が拮抗する県民意識へ応える意図がにじむ。制度の設計次第で、町の風景が変わる可能性もある。
過去の報道では、同原発の1基稼働で年1100億円規模の収支改善が見込まれるとの試算が示されてきた。再稼働のインパクトは企業収益だけでなく、地域にどれだけ還元されるかという問いに直結する。誰に有利なのか、基金設計の透明性と検証可能性が鍵になるとみられる。数字が独り歩きしない仕掛けが求められている。
県議会での説明へ、問われる「誰に有利か」
小早川智明社長は2025年10月16日に新潟県議会へ参考人として出席し、基金の考え方や地域貢献策を説明する調整が進む。再稼働には県と立地自治体の同意が実質的に必要とされる一方、花角英世知事は態度を明らかにしていない。議場では、県民の不安と期待が交錯するだろう。技術と生活の間に横たわる溝をどう埋めるかが問われる。
現時点で確認されている範囲では、基金の期間や拠出方法など詳細は検討中である。一部報道によれば、県民意識は賛否が拮抗しているとされ、行政の説明責任も重い。偶然の思いつきではなく必然の制度設計なのか、資金の流れと評価の仕組みをどう担保するかが論点になる。合意形成の筋道が見えるかが勝負どころだ。
同社は現段階で正式発表に至っておらず、提案内容は県議会での議論を経て具体化するとみられる。大型マネーが地域政策に与える影響を懸念する声も出るなか、使途の非公開や恣意性は避けたい。透明な審査や第三者の関与を設けられるかが、信頼の分岐点になる。拙速ではなく、納得の積み重ねが必要だ。
広がる“地域振興マネー”、関電の50億円と比べて
電力と地域の新たな関係は、関西でも動きが先行した。関西電力は2025年8月25日、福井県内の立地地域の振興に向け、毎年50億円前後を拠出する仕組みを公表した。信託銀行を介し第三者機関の審査を経て寄付を行う枠組みで、2025年度は約207億8,000万円を拠出すると示した。客観性と透明性を担保する設計が特徴といえる。
この動きが波及する形で、東電でも「規模感」が意識されているとみられる。一部報道では、年間100億円を10年間拠出する案が社内にあるとの観測も流れる。関電の先例を下回れば地元の納得を得にくいとの見立てもあり、各社の競争が地域制度を変えていく構図が浮かぶ。偶然ではなく業界の必然か、視線が集まる。
ただ、資金の多寡だけでは地域の未来は決まらない。安全対策と情報公開、雇用と教育の連動、次世代の産業づくりまでを含めた全体設計が求められる。16日の説明を経て、県民がどう判断するか。日本海の風が冷える季節、再稼働の是非を超えた「共創」の形が問われている。答えは基金の設計と運用の細部に宿るはずだ。
