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東京都は2025年、野村不動産など民間企業と連携し、江東区の海の森水上競技場で「空飛ぶクルマ」の水上離着陸拠点に関する実証実験を行った。2回目は波の影響を受けやすい水域に浮体式ポートを設置し、機体と同程度のサイズと重量を想定したヘリコプターを離着陸させ、成立性を確かめた。
水上ポートが狙うのは、陸が足りない東京の「余白」
バーティーポートは、空飛ぶクルマが発着し、乗降や整備の起点となる施設だ。都が水面に目を向けるのは、陸上で用地を確保しにくい湾岸部でも、湖畔や島しょ部でも、拠点の選択肢を広げられるからである。言い換えると、水辺を「港」に見立てる発想だ。
今回の実証では、より揺れの影響が出やすい水域に浮体を置き、空飛ぶクルマに近い寸法と重量を持つヘリで発着を試した。単に着地できるかだけでなく、波や風で足元が動く状況で、機体側と施設側の許容幅がどこにあるかを探る意味合いが大きい。
水上での運用には、係留の方法、離着陸時の姿勢の安定、乗降時の転落や濡れへの対策など、陸上とは異なる条件が増える。都が「湾岸、湖畔、島しょ部」での活用を掲げるほど、荒天時の中止判断や代替交通を含め、現場の運用設計が先に問われる。
離着陸場だけでは足りない、運航と受容の詰め
この取り組みは、東京ベイeSGプロジェクトの先行プロジェクトの一環として位置付けられ、陸海空の移動をつなぐ構想の中で検証が進む。関連する実証では、自律航行の小型船舶やロボットの運用も含めて課題抽出を行ったとされ、拠点は単体ではなく「乗り継ぎの連鎖」の一部として評価され始めた。
一方で、都内ではヘリを使い、都心と臨海部の移動で音や風の影響、運航手順を確かめる実験も行われてきた。水上ポートが増えれば、沿岸の居住地や公園利用者との距離は近づく。技術の検証と並行して、騒音や安全確保をどう説明し、納得を積み重ねるかが成否を左右する。
東京都は2025年から2027年を対象期間とする社会実装プロジェクトを進め、2030年の市街地での展開を目標に掲げる。水上の拠点は候補地を広げる一手になり得るが、波や気象の制約を抱えたまま「日常の交通」に編み込めるかどうかは、運航の細部と地域の受容を同時に詰め切れるかにかかっている。
