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トランプ米大統領の側近たちが、静かな会議室で地図と資料を広げている。表に出ていないのは、ロシアと協議を重ねながらウクライナ戦争の終結案をまとめようとしているからだ。米メディアAxiosやロイター通信によると、ホワイトハウスは水面下で新たな和平ロードマップを作成しており、複数の米ロ当局者がその存在を認めているという。
ロシアと描く28項目の和平ロードマップ
報道によれば、この計画は全28項目からなる行程表で、今年のガザ停戦合意に向けてトランプ氏が示した構想を土台としている。柱は「ウクライナでの停戦と平和」「ウクライナへの安全の保証」「欧州全体の安全保障」「米国とロシア、ウクライナの将来の関係」の4分野で、軍事行動の停止だけでなく、戦後の安全の枠組みづくりまで含む包括案だとされる。トランプ氏はガザでも、停戦と同時に治安維持や復興支援の仕組みをパッケージで示す手法をとっており、その延長線上でウクライナ案が練られている形だ。
実務を主導しているのは、トランプ政権の中東担当特使スティーブ・ウィットコフ氏である。Axiosによると、同氏はロシア側のキリル・ドミトリエフ大統領特別代表と「幅広い協議」を重ねており、8月にアラスカで行われた米露首脳会談で示された原則も踏まえながら文書の骨格を練っているという。ロシア側は、この案が対立の長期的な解決や米露関係の再構築にもつながると期待感をにじませており、トランプ氏との次の首脳会談までに書面の形にすることを目標にしていると伝えられる。
ウクライナとの接点と、欧州への説明
水面下の動きは、当事者であるウクライナにも徐々に伝えられている。ウクライナ当局者の話として報じられたところでは、ウィットコフ氏は今週、国家安全保障・国防会議のルステム・ウメロフ書記と米マイアミで会い、計画の概要について意見交換したという。これに先立ち、同氏はトルコでゼレンスキー大統領側近との会談を調整していたものの、日程の都合で延期されたとも伝えられており、ウクライナ側との対話はまだ手探りの段階にある。
一方、ホワイトハウスは欧州各国の担当者にも非公開の形で説明を始めたと米当局者は語る。戦争の行方が自国の安全保障に直結する欧州としては、米露間で妥協点が先に固まれば、自分たちが既成事実を追認させられるのではないかという懸念もある。28項目の具体的な文言や、占領地の扱いといった最も敏感な論点は明らかになっておらず、ロイターによれば、こうした報道に対してホワイトハウスはコメント要請に応じていない。関係国に断片的な情報だけが広がり、慎重な空気を生んでいる。
ガザ停戦案からの連続性と、残る不透明さ
今回のロードマップがガザ停戦案を手本としているとされることは、トランプ政権が「短期間での停戦合意」と「その後の安全保証」を一つのパッケージとして描こうとしていることを示す。これまでの報道では、ウクライナへの安全の保証として、米軍の地上部隊派遣は行わず、欧州諸国と連携した防空支援や制裁の見直しなどを組み合わせる構想が取り沙汰されてきた。戦争を早期に終わらせたいという大統領の思惑と、国外での長期的な軍事関与を避けたい支持層の声との折り合いを探る試みとも言える。
一方で、この構想をロシアがどこまで受け入れるのか、主権と安全を守りたいウクライナがどう評価するのかは見通せない。計画はまだ草案段階で、各国との協議を経て修正される余地も大きいとされる。戦場では砲声が止まらないまま、首都ワシントンや欧州の会議室では、公開されない文書と沈黙する当局者たちを挟んだ静かな駆け引きが続いている。
