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トランプ米大統領が15日、米国は「いま中国との貿易戦争のさなかにある」との認識を示した。連邦最高裁が11月第1週に国際緊急経済権限法（IEEPA）を根拠とする関税の是非を審理する直前の発言であり、政権がことし進めてきた関税運用の延長線をにらんだ一言と映る。交渉と司法が交差し、緊張が高まっている。
ホワイトハウスの一言が示す緊張
秋の風が吹き込むホワイトハウスの回廊で、記者の問いが飛ぶ。貿易戦争の最中か――。トランプ氏は短く「現在、そのような状態にある」と応じ、立ち止まることなく執務棟へ消えた。言葉は少ないが、政策の手触りを伝える一言である。
当日の一問一答は公式全文がまだ公開されていないが、政権が対中を含む関税を交渉テコとして用いてきた事実に照らせば、発言は文脈に沿う。「貿易戦争」という直截の表現は、外交相手への圧力であると同時に、国内向けの合図でもあるとみられる。
ことし5月には一時的な緊張緩和もあった。合意を受けて双方が報復関税の一部を90日間停止する枠組みが示され、米国側の追加上乗せ分を外す措置も発表された。ただ、基礎となる関税体系は残り、火種は消えていない。発言の重みはそこに宿る。
IEEPAを軸に動いた2025年の関税
転機は4月初旬である。大統領はIEEPAを根拠に、対外的な不公正慣行が米国の安全と経済に異常な脅威をもたらすとして国家非常事態を宣言し、追加関税を広範に導入した。対外赤字の是正と供給網の再構築を狙う色合いが濃かった。
その後、関税は相手国や品目に応じて調整され、交渉と連動しながら運用が続いた。高い赤字相手には上乗せする一方、対話の進展に応じて見直す修正条項を組み込む姿勢も示された。経済と安全保障を絡めた「交渉の装置」として機能してきたと映る。
5月には対中協議が前進し、米国は8日と9日に上乗せした追加分を外し、中国も報復上乗せを90日停止する枠組みが示された。双方の措置は14日までの実行がうたわれ、応酬は一時緩んだ。だが、根幹の関税は維持され、長い駆け引きの途上にある。
最高裁の迅速審理が映す争点
ただ、法廷闘争は続く。連邦最高裁は9月、IEEPAを根拠とした一連の関税権限をめぐる訴えの迅速審理を決め、11月5日に口頭弁論を開くと公表した。政権と原告双方が早期の判断を求める中、審理は異例のスピードで進んでいる。
争点は、IEEPAの「輸入の規制」がどこまで関税賦課を許容するかに尽きる。外交と通商に広い裁量を認めるべきだとする見方と、議会の課税権を侵す過度の委任だとする批判が正面からぶつかる構図が浮かぶ。判決は政権の交渉力にも直結する。
大統領が審理を傍聴する可能性に言及したとの報もあるが、現時点で確認されている範囲では公式な発言録は見当たらない。いずれにせよ、司法判断は通商交渉と市場心理を直撃し、年末に向けた企業の投資や調達判断に影響が広がっていく。
