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15日、米財務長官のベセント氏がテレビのインタビューで、トランプ大統領が今月下旬に日本を訪れ、その後に韓国へ向かう見通しを語った。31日に開幕するアジア太平洋経済協力会議（APEC）に合わせ、中国の習近平国家主席との会談調整も進むという。米中の対立が再燃する中で、外交の糸口を探る動きがにわかに熱を帯びている。
アジア歴訪と米中会談の行方
ワシントンの朝、ニュース専門局の画面に「日本と韓国」という地名が並んだ。ベセント氏は、アジア歴訪の日程に言及し、APECに合わせた首脳会談の調整状況を示したとされる。ただし、現時点で確認されている範囲では、米政府からの詳細な公式日程発表は出ていない。
APECは31日に開幕予定で、開催国のもとに各国首脳が集う。米中はその場外でもぎりぎりの駆け引きを続けており、ベセント氏は「首脳会談に前向きだ」との趣旨を示唆したと伝えられる。実現すれば、米政権のアジア戦略を占う最初の大きな節目となるとみられる。
日本にとっても意味は重い。早期の訪日は、日米の安全保障と経済の両輪を同時に走らせる合図となりうるからだ。サプライチェーン再編が続く中、APECという多国間の舞台で、日米中の距離感がどう再定義されるのかに注目が集まっている。
レアアースと関税、止まらない揺さぶり
背景には、中国がレアアースの輸出規制を拡大し、米産業の要となる素材の流れを絞っている現実がある。米通商代表部（USTR）のグリア代表は、この動きを「世界への経済的威圧」と強く批判し、AIや自動車、スマートフォンなど幅広い分野に影響が波及すると警鐘を鳴らした。供給網の脆さが再び露わになった構図である。
トランプ氏は対抗措置として中国製品への関税を100％まで引き上げる可能性に言及し、米中の緊張はさらに高まった。一方でベセント氏は、対立のエスカレーションは望まないと語り、必要なら応じるが、まずは外交的解決を探る姿勢をにじませた。圧力と対話が同時進行する局面が続いていると映る。
レアアースは磁石や高性能モーター、半導体製造装置などに不可欠で、日本企業にも直撃しかねない。米中の応酬が長引けば、在庫や代替調達でしのぐだけでは難しくなる。域内サプライチェーンの再編は、企業の投資計画や価格設定にも静かに波紋を広げている。
交渉の窓は開いているのか
会談の実現を左右するのは、これから数週間の実務協議だ。USTRは中国側に電話協議を打診したが、当初は応じられなかったと明かしている。それでも連絡線は保たれており、双方が着地点を探る限り、対話の扉は閉じていないとみられる。神経質な往復が続く気配だ。
一部報道によれば、関税や輸出規制をめぐる一時的な緩和や見直し案も俎上に載りうる。ただ、相互不信は根強く、レアアースの供給管理や産業政策は主権の中核に近い。ベセント氏が語る「対立を激化させたくない」というメッセージが、どこまで具体策に結びつくかが試される局面である。
訪日が実現すれば、初動の一手が東アジアで示される。日本は調整役か、あるいは当事者としての覚悟を問われるのか。市場も企業も息を詰めて見守っている。秋のアジアで交わされる握手が、対立の縫い目を少しでもつなぎ直せるのかが焦点だ。
