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記者団との短いやりとりが合図になった。2025年11月16日、フロリダ州ウェストパームビーチでトランプ米大統領がベネズエラのマドゥロ大統領と協議に入る可能性に言及した。カリブ海や東太平洋で疑われる密輸船への攻撃が続き、米軍の展開が広がる最中の発言である。緊張の出口と圧力の継続が同時に浮かぶ場面だった。
トランプ氏が協議を示唆、圧力は緩めず
トランプ氏は同日、記者団に対しマドゥロ氏との接触に含みを持たせ、相手側が対話を望んでいるとの趣旨を示した。発言は簡潔で、交渉の段取りや条件には触れなかった。一方で、マドゥロ氏が麻薬取引と関係するとの非難は従来通りであり、強い姿勢は保たれている。
同月14日には「ベネズエラについてある程度決心した」と述べ、近く判断を示す可能性を示唆していた。政権高官は前週、ホワイトハウスで3回の会合を開き、地上攻撃を含む軍事作戦の選択肢を協議したとされる。実務面の準備が並行して進み、選択肢は幅広く検討されている。
一方、ベネズエラの通信情報省は最新の発言へのコメントを控えた。米側では、軍・治安ネットワークとされる「カルテル・デ・ロス・ソレス」をFTO（外国テロ組織指定）に位置づける動きが表面化し、資金や支援の遮断を強める構えだ。対話の兆しと圧力の梃子が併走する構図である。
海上攻撃の拡大が映す緊張、法的整理と地域の懸念
米軍は9月以降、ベネズエラ沖のカリブ海や東太平洋で、麻薬密輸船とされる小型船舶への攻撃を重ねてきた。空母ジェラルド・R・フォードの展開や艦艇・戦闘機の増派も進み、作戦は海域をまたいで拡大している。船舶の破壊と死者の報告が相次ぎ、現地の緊張は一段と高まった。
人権団体は、証拠開示が不十分なまま致死的武力を行使していると批判し、超法規的殺害への懸念を示している。米政府は「麻薬カルテルとの武力紛争」と位置づけるが、国際法上の自衛や武力行使の要件を満たすかは議論が続く。司法手続きの適用範囲も問われ、評価は割れている。
こうした圧力の最中に協議の可能性が示されたことで、対立管理に向けた小さな接点が生まれたと受け止められる。ただ、作戦は継続しており、地域の不安と米国内の賛否は交錯する。次の一手が外交か軍事かで、緊張の収まり方も大きく変わっていくだろう。
