カナダ・メキシコとの新協定案浮上　北米サプライ網に広がる不確実性

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2025.12.04

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米国のトランプ大統領は3日、カナダとメキシコとの間で新しい通商合意を結ぶ案に言及した。北米3か国は長年、自由貿易協定の下で生産や物流を密接に結び付けてきた。発言は、そのルールの行方をめぐり、企業や働き手の間に静かな緊張を走らせている。

国境をまたぐ仕事と生活に広がる不透明感

自動車部品や農産物など、多くの製品は米国、カナダ、メキシコの工場や農場を何度も行き来しながら完成に近づく。既存の協定が関税をほぼ撤廃していることで、国境を越える取引コストが抑えられ、3か国の雇用と投資を支えてきた。

しかし、新たな枠組みへの言及があるだけでも、輸出入に依存する中小企業やサプライチェーンの担当者は、契約条件や投資計画を見直す必要が出てくる。関税や原産地規則が変われば、工場の立地や調達先を移さざるをえない企業も出かねないからだ。

国境に近い地域では、通勤や買い物で日常的に国境を越える人も少なくない。そうした人々にとっては、制度変更そのものよりも、議論が長引き先が読めなくなることの方が負担になりやすい。将来の収入見通しが揺らげば、住宅ローンや子どもの進学計画にも慎重さが増すからだ。

トランプ氏が新たな協定の可能性に触れた背景には、対外赤字や製造業の空洞化に対する不満を有権者に示したい思惑があるとみられる。北米3か国は、NAFTAやそれを引き継いだUSMCAなどの枠組みで貿易自由化を進めてきたが、その恩恵の分配をめぐる議論は今も続いている。

米通商代表部や農務省の資料によれば、北米の自由貿易圏は世界でも最大級の市場を形成し、米国の輸出の大きな割合を占める。とりわけカナダとメキシコにとって、対米輸出は経済と雇用の柱であり、協定の枠組みが揺らげば自国の政治にも直結するため、両国政府は発言の真意を慎重に見極めようとしている。

新たな協定づくりが本格交渉に発展するのか、それとも圧力をかけるための政治的メッセージにとどまるのかはまだ見通せない。いずれの道を選ぶにせよ、北米の貿易ルールをめぐる駆け引きのコストを、最終的に誰がどこまで負担するのかが問われ続ける。