麻薬犯罪で有罪の元ホンジュラス大統領　トランプ恩赦で釈放の異例

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.12.03

本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]

中米ホンジュラスの前大統領フアン・オルランド・エルナンデス氏が、米国での麻薬密売と銃器関連の罪で禁錮45年の判決を受けていたにもかかわらず、トランプ米大統領の恩赦により連邦刑務所から釈放された。麻薬犯罪で有罪となった外国元首への異例の恩赦は、「誰のための正義なのか」という問いを突きつけている。

“麻薬国家”の傷跡と揺らぐ被害者の信頼

AP通信などによれば、エルナンデス氏は大統領在任中、麻薬組織からの賄賂を受け取り、数百トン規模のコカインがホンジュラス経由で米国に流れるのを黙認したと認定され、2024年にニューヨークの連邦地裁で有罪判決を受けた。こうした経緯から、彼は自国を「麻薬国家」へ変えた象徴的存在と見なされてきた。

暴力と汚職に苦しんできたホンジュラスの市民にとって、米国での長期刑判決は、権力者も裁かれうるという数少ない希望だった。そこからわずか数年での恩赦は、麻薬戦争の犠牲になってきた遺族や若者に「結局、政治とコネが勝つのではないか」という深い虚無感を与えていると現地メディアは伝える。

一方で、エルナンデス氏の支持者は、バイデン政権下の捜査が政治的だったと主張し、トランプ氏の決定を歓迎している。大統領選を控えたホンジュラスでは、彼の与党系候補を後押しする思惑も絡み、恩赦への評価は地域や階層によって鋭く割れている。誰のための正義なのかという問いは、まずこの分断した社会に突き付けられている。

強硬な麻薬対策と矛盾する“寛大さ”

トランプ氏は、エルナンデス氏が「政治的なでっち上げ」の被害者だと主張し、全面的な恩赦に踏み切ったと説明している。だが同じ政権は、カリブ海で麻薬密輸容疑の船舶を軍事攻撃し、ベネズエラのマドゥロ政権を「麻薬独裁」と非難しながら圧力を強めてきた経緯がある。この強硬姿勢と今回の寛大さは、表向きの論理だけでは結びつきにくい。

ロイター通信やワシントン・ポストの報道では、米議会の民主党議員だけでなく一部共和党議員や元麻薬取締官も、この恩赦を「麻薬犯罪に対する抑止力を自ら傷つける行為」と批判している。麻薬組織と結託したとされる元首を免責しながら、他国の指導者には厳罰を求める姿勢は、米国のメッセージを矛盾させかねないからだ。

米国はこれまでもパナマのノリエガ将軍など、外国の元指導者を麻薬事件で訴追してきたが、重い有罪判決の後に同じ政権が政治的恩赦を与える例はほとんどない。今回の決定は、麻薬対策が法の支配ではなく政権の好みで運用されているのでは、という疑念を強め、国際的な「麻薬戦争」の物語そのものを揺らしている。

国際社会が直面する次のリスク

エルナンデス氏の解放は、中南米の他の指導者たちに「米国と良好な関係を築けば、最終的には助けてもらえる」という誤ったシグナルを送る恐れがある。人権団体の関係者は、権力者が麻薬組織と結びついても、政治的に利用価値があれば逃げ切れるとの計算が働きかねないと懸念する。

また、米司法当局が主導してきた域外での麻薬事件捜査に対する信頼も揺らぐ。ホンジュラスや周辺国の検察は、エルナンデス氏周辺の汚職捜査を進めにくくなり、証言協力を申し出ていた関係者も、安全より報復を恐れて口を閉ざす可能性がある。結果として、最前線で暴力にさらされる地域社会ほど、正義から遠ざけられてしまう危険がある。

日本を含む各国は、麻薬対策で米国の情報や軍事力に依存してきたが、その基盤となる「誰をどこまで追及するのか」という基準が揺らげば、連携の前提も変わってくる。麻薬の流通で利益を得た指導者よりも、依存や暴力に苦しむ市民がコストを払わされているという現実だけが、なお重く残る。