トランプ氏がEUのX制裁を批判　「ひどい決定」と欧州の進路に警告

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2025.12.09

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ドナルド・トランプ米大統領が12月8日、ホワイトハウスで記者団に対し、欧州連合（EU）がイーロン・マスク氏のSNS「X（旧ツイッター）」に科した1億2000万ユーロ（約140億円）の制裁金を「ひどい決定だ」と批判し、欧州は「非常に悪い方向に進んでいる」と警告した。自ら詳細は把握していないと認めながらも、移民や規制を巡って欧州の進路に疑問を投げかける発言を重ねたかたちだ。

SNS規制は誰のためか　揺れる利用者と企業

今回の発言は、EUのデジタル規制が「誰の利益を守ろうとしているのか」という問いを改めて浮かび上がらせる。欧州委員会は5日、デジタルサービス法（DSA）に基づき、Xが青い認証バッジの表示方法や広告の透明性、研究者へのデータ提供で義務を守っていないとして、1億2000万ユーロの罰金を科した。公式説明では、偽情報や詐欺から利用者を守るための初の本格的な執行だと強調している。

一方で、マスク氏はプラットフォーム上で罰金を痛烈に批判し、米メディアによれば「言論の自由への攻撃だ」と反発している。米政府内や共和党議員からも、欧州の動きは米IT企業への不当な圧力だとの声が出ている。利用者の側から見れば、透明性向上は安心につながる半面、アルゴリズムや広告の運用が政治的対立の道具になれば、サービスの仕様変更や利用体験の制限として跳ね返ってくる可能性もある。

「欧州は悪い方向に」　トランプ発言が映す対立の構図

トランプ氏は今回、罰金そのものへの違和感に加え、「ヨーロッパをヨーロッパのまま保ちたい」「欧州は人々にとって非常に悪い方向に進んでいる」とも述べたとロイター通信などは伝えている。先週公表された米国の新たな国家安全保障戦略では、欧州について移民問題や過度な規制への懸念が明記され、現行の進路に「抵抗を育てる」との表現まで盛り込まれた。SNS規制を巡る今回の応酬も、そうした対欧州観の延長線上にある。

背景には、デジタル市場で主導権を握る米企業と、利用者保護を掲げてルール強化を進めるEUとの長年の緊張関係がある。ウクライナ戦争の終結方法や防衛負担分担を巡る摩擦に、オンライン空間の統治という新しい火種が加わりつつあるとも言える。トランプ氏の言う「悪い方向」が具体的に何を指すのかは曖昧なままだが、米欧双方が自らの価値観を前面に出して規制とビジネスを争う構図が固定化すれば、利用者が使うサービスや享受できる言論空間が地域ごとに分断されていくリスクも見えてくる。