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米国がベネズエラ領内での軍事行動に踏み切るのではないかという見方が広がるなか、トランプ大統領がマドゥロ政権への圧力を一段と強めている。米政治サイトPoliticoの最新インタビューで、大統領はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領について「残された時間は多くない」と述べ、米軍による地上侵攻の可能性を問われても明確には否定しなかった。背景には、ベネズエラ発とされる違法薬物の流入を軍事力を含むあらゆる手段で断とうとする強硬な方針がある。
薬物対策名目で進む軍事圧力、市民に迫るリスク
今回の発言は、ここ数カ月で既に始まっている軍事作戦の延長線上にある。米軍は9月以降、カリブ海や東太平洋で麻薬密輸船とされる船舶への空爆を繰り返し、80人以上が死亡したと報じられている。さらに空母打撃群や海兵隊部隊がベネズエラ近海に展開し、国防総省の南方軍は違法薬物流通を標的とする新たな合同任務部隊を発足させた。表向きは「麻薬との戦い」だが、実際にはベネズエラ周辺の安全保障環境そのものを塗り替える規模になりつつある。
圧力を受ける側のベネズエラでは、政府が軍と民兵の動員を進め、「前例のない軍事的脅威だ」と非難している。経済危機と政治的抑圧に揺れてきた社会に、今度は武力衝突の不安が重なる形だ。アメリカに暮らすベネズエラ系住民の間でも、母国が「麻薬国家」と一括りにされることへの違和感と、独裁的なマドゥロ政権が外圧を口実に締め付けを強めるのではないかという懸念が交錯している。仮に空爆や限定的な地上攻撃にとどまっても、人々の避難や周辺国への難民流出が加速しかねない。
「麻薬国家」認定と政権交代シナリオ、揺れる正当性
トランプ政権は、マドゥロ政権を「麻薬テロ組織」と同列に置き、同国の刑務所からの強制移送者や犯罪組織Tren de Araguaの存在を挙げて脅威を強調してきた。ホワイトハウス報道官も「米国に薬物を押し流す勢力にはあらゆる力を行使する」と語り、軍事作戦を法執行の延長ではなく準戦時行為として位置付けている。一方で、2019年の米麻薬取締局の報告書などは、米国に流入する合成麻薬の主な起点はメキシコと中国製の原料だと指摘しており、ベネズエラの役割をどこまで根拠を持って「主犯」とみなせるのかには疑問も残る。
人権団体や国際法の専門家は、麻薬対策を名目にした一連の軍事行動が、事実上の政権交代作戦に近づきつつあると警告する。米国では、ベネズエラ沖の船舶攻撃を正当化する政府の法的文書の公開を求める訴訟も起きている。トランプ大統領はインタビューで「具体的な軍事計画は話さない」としつつ、空爆の可能性を示唆し、地上侵攻を「排除しない」と含みを持たせた。独裁体制を続けるマドゥロ政権を放置すべきではないという声と、軍事介入が市民をさらに危険にさらし地域を不安定化させるとの懸念がぶつかるなか、当事国の市民にとってはどの選択肢も代償を伴うという厳しい現実だけが浮かび上がっている。
参考・出典
- Trump doesn't rule out troops in Venezuela, says President Nicolás Maduro's 'days are numbered'
- His days are numbered: Trump won’t rule out US troops to oust Nicolas Maduro
- Maduro’s days are numbered, says Trump
- New Joint Task Force Established to Lead SOUTHCOM Counter-Narcotics Operations
- Why is the US on the verge of war with Venezuela?
