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韓国・慶州で開かれるAPEC首脳会議の直前、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が対話の機運を高めている。30日の会談観測が一部で流れるが、現時点で公式発表はない。米中の関税「休戦」は11月10日に期限を迎える。延長か、再燃か。世界経済の踊り場で、分岐点となる対話が近づいていると映る。
韓国で向き合う2人、空気は緊張と期待のあわい
夜明け前の慶州では、首脳団の車列を待つ警備の赤色灯が静かに往来し、国際メディアの三脚が並ぶ。APECの首脳週は10月27日から11月1日、首脳会議は10月31日から11月1日とされ、各国の往来がピークを迎える。経済協力の舞台に、米中の“直談判”が重なる可能性が高い状況だとみられる。
双方は実務者協議を重ねてきたが、会談の日程や形態は依然として伏せられている。30日説が先行しつつも、確認できるのは「韓国でのAPEC日程に合わせ、両国が高官級の接触を続けている」という点に尽きる。具体のアジェンダは貿易と供給網、安全保障にまたがる広い範囲が想定される。
視線は自然と「何が合意されるのか」に集まる。だが、当局発表の文言は慎重で、首脳の二国間会談についても“調整中”の含みを残す。米中ともに国内の判断材料が多く、合意の幅は最後の数行で変わり得る。現場のざわめきは、期待と警戒が同居する国際会議特有の空気を帯びている。
関税「休戦」は11月10日まで、延長か再燃か
今回の会談を時間軸で縛るのが、対中関税の「引き上げ停止」の期限である。米政府は8月11日、対中の引き上げ関税の停止を11月10日まで延長すると公表した。停止期間中も10%の相互関税は据え置かれており、米側は交渉の進展をにらみつつ“土台の関税”を維持している構図だと映る。
期限が迫るにつれ、市場は「延長の可否」を織り込み始める。停止が切れれば、引き上げ関税の適用再開リスクが意識され、企業は年末調達や投資計画の見直しを余儀なくされる可能性がある。米中双方のメッセージは、為替やコモディティに波紋を広げやすく、発表の一語一句が重みを持つ局面である。
米側は「相互主義」を掲げ、国内製造と供給網の再構築を優先課題に据える。中国側は輸入拡大や市場アクセスの論点を交渉のテーブルに戻したい思惑がにじむ。いずれにせよ、11月10日という明確なデッドラインが、慶州での対話に実務的な圧力をかけているのは間違いないとみられる。
レアアース、輸出規制、港湾費—テーブルに並ぶ難題
詰めの争点として浮上しているのがレアアースだ。中国側は最近の稀土関連の輸出管制について、法と制度に基づく措置であり、不適切な用途への流出を防ぐためだと説明している。自動車や防衛、電子部品に不可欠な素材だけに、わずかな規制の振れ幅でも供給網への影響は大きいとの受け止めが広がっている。
同時に、米国の輸出規制をめぐる“穿透ルール”も火種だ。米国がエンティティ・リストの実効範囲を子会社や関連先へ広げる運用を強めたことに対し、中国商務省は「国際的な産業・供給網の安定を損なう」と強く批判してきた。規制の線引きが企業活動の不確実性を高めているのは確かである。
さらに、米側が10月14日に導入したとされる造船関連への港湾費措置も、双方の応酬を加速させた。中国側は貿易の新たな障害だと反発し、是正を求めている。関税の「休戦」を土台に、輸出管理や港湾費といった周辺の噴出をどう抑えるか。慶州の会談は、細部の調整力が問われる局面だといえる。
