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秋雨の音が残る欧州の夜、三首脳の短い共同声明が公開された。英国、フランス、ドイツは2025年10月10日、凍結されたロシアの国有資産の「価値」をウクライナ軍支援に用いる方針で歩調を合わせた。声明はインフラ攻撃の激化を非難し、米国と連携して具体化を急ぐと記した。法の枠を踏まえつつ圧力を高める転機と映る。
三首脳、「価値」をてこに軍支援を前に進める
共同声明は、ロシアのウクライナに対する攻撃が激化し、送電網や発電所などの重要インフラが標的になっている現状を強く非難した。プーチン大統領が和平交渉を引き延ばしているとして、圧力を一段と強める考えを明確にしたと映る。
三首脳は、凍結されたロシアの国有資産の「価値」を、協調的な方法でウクライナの軍を直接支えるために活用する用意があると表明した。米国と緊密に協力して設計を進め、ロシアを交渉の席に戻す梃子にする狙いがにじむ。
声明は併せて、ロシアの影のタンカー網への対処を含む追加措置の検討や、支援国連合の枠組みでの継続支援も示した。文面は抑制的ながら、「没収」ではなく「価値の活用」と書き分け、法的な線引きを意識した表現が目を引く。
数字が語る欧州の資産と「利ざや」活用の枠組み
現時点で確認されている範囲では、欧州連合域内で凍結されているロシアの中銀などの主権資産は約2,100億ユーロにのぼる。凍結により生じる利ざやは年数十億ユーロ規模と見積もられ、これをウクライナ支援に充てる方針が既に合意されている。
この仕組みでは元本は動かさず、中央証券保管機関に積み上がる現金運用益を拠出する。制裁を続ける限り収益が発生し、解除後は止まるという「臨時の収益」に依拠する設計である。法的安定性を優先した折衷案といえる。
今回の三首脳の合意は、利ざや活用にとどまらず、凍結資産の「価値」を担保に資金調達を拡張する方向性を示した点に意味がある。資金の規模や期間はなお詰めが残るが、抑止と交渉を両にらみする欧州の新段階が浮かぶ。
被害者補償というもう一つの使い道
一方で、市民社会からは被害者補償に資金の一部を充てるべきだとの声が強まっている。2025年10月13日、複数の人権団体が連名で、資産担保型の新たな融資が実現するなら、その2％に当たる約28億ユーロを国内の賠償計画に回すようEUに求めた。
提案は、性暴力の被害者支援、行方不明者の家族の名誉回復と補償、拷問など重大な人権侵害からの回復支援を想定する。賠償は加害者の責任追及だけでなく、被害者の権利の実現であるという原則に立脚した訴えである。
被害者への迅速な賠償は、国内の社会復帰を後押しし、法の支配への信頼を広げる効果があると団体側は指摘する。大胆だが実務的な案として、欧州の指導力を示す機会との見立ても出ている。今後の首脳協議の焦点になりそうだ。
