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ドイツ外務省は2025年9月29日、英国、フランス、ドイツの欧州三カ国がイランとの外交ルートと交渉を今後も追求するとの共同声明を公表した。制裁の歯車が再び回り始めても、対話の扉は閉じていないという合図である。国連による対イラン制裁の復活を受け、緊張の針は振れやすい。にもかかわらず三カ国は、事態の制御に必要な言葉を選んだ。
再制裁下でも扉は閉じない、E3の共同声明
声明は「国連制裁の復活は外交の終わりを意味するものではない」と明言した。求めたのは、イランに対する挑発の自制と、核分野の保障措置に関する法的義務の順守である。三カ国は、イランが核兵器を追求せず、取得せず、開発しないという基本目標を共有すると重ねて述べた。硬い文言の間に、最後の安全弁としての対話を残す姿勢が読み取れる。
国連の再制裁は日本時間2025年9月28日に発効した。ドイツ外務省が公開した文書には、安保理決議に基づき停止されていた制裁群が復活した旨が記され、各国に履行を促す表現が並ぶ。三カ国は「加盟国としての義務に従い、速やかに制限を再導入する」とし、実務のエンジンを回す意思を示した。
同時に声明は、事態のエスカレーションを避けるための呼びかけを軸に据えた。保障措置の完全な順守に戻ること、そして緊張を増幅させる一切の行動を控えることが、交渉の再起動に必要だと指摘する。核兵器を持たせないという目的を堅持しつつ、ルールに基づく合意の回復に向けた糸口を探る構図である。
国連のスナップバックが動くまで
歯車が動き出したのは2025年8月28日である。三カ国は安保理に対し、イランの重大な不履行を通告し、いわゆるスナップバック手続きを始動させた。手続は原則30日間の猶予を与える設計で、当事者に最後の調整の場を残す。だが、その間もイランの核活動をめぐる懸念は収まらなかった。
続いて2025年9月19日、安保理は制裁解除継続を模索する決議案を否決した。緊張を和らげるための迂回路は閉ざされ、時計は再制裁の時刻へと進んだ。国連の場で合意形成が整わなかったことは、核不拡散をめぐる国際合意の維持がいかに難しくなっているかを示す。
復活したのは武器禁輸など、過去の安保理決議に基づく一連の制限である。資産凍結や渡航制限に加え、軍需関連の取引や移転を厳格に縛る措置が再び効力を持つ。いずれも「新しい制裁」ではなく、合意の前提が崩れた場合に元へ戻すという仕組みの再起動だ。国際社会の圧力と対話の両輪をどう回すかが問われる。
次の交渉の条件、何が問われるか
三カ国は2025年7月の時点で、手続の延長と引き換えに条件を提示していた。直接かつ無条件の協議再開、保障措置の完全順守、そして高濃縮ウランの在庫に関する懸念への対処である。声明は、こうした提案にイランが真剣に応じなかったと評価し、最終手段として手続きを発動した経緯を説明する。
核開発の現状認識も厳しい。国際原子力機関の最新報告は2025年9月4日付で、イランの濃縮ウラン保有量が合意の上限の48倍に達したと指摘する。監視の抜け落ちが続くなか、核計画の透明性は後退したままである。だからこそ、交渉再開には検証可能な是正措置が欠かせないというのが三カ国の立場だ。
道筋は二つに分かれる。イランが検証可能な形で順守に戻り、緊張を高めない一連の措置を取れば、新たな政治的合意へ進む余地が生まれる。逆に実態が改善しなければ、再導入された制限が各国の国内措置と結びつき、圧力はさらに強固になる。いま必要なのは、相互の信頼を少しずつ積み上げる具体的な一歩である。
参考・出典
- E3 joint statement on Iran: activation of the snapback – Federal Foreign Office
- Joint statement by the foreign ministers of France, Germany and the United Kingdom on the initiation of the snapback process (28 August 2025) – Ministry for Europe and Foreign Affairs
- E3 to 'continue to pursue diplomatic channels' on Iran | Reuters
