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米国の対ベネズエラ圧力が、制裁の「紙の世界」から海上の実力行使へと踏み込んだ。2025年12月22日、トランプ米大統領はマドゥロ大統領について退陣が賢明だとの考えを示し、ここ数週間でベネズエラ沖で押収した制裁対象の石油を米国が保持または売却できるとも述べた。直前には制裁対象タンカーの出入りを全面封鎖する命令が出され、周辺海域では船舶攻撃で少なくとも100人の死者が出ている。
海の封鎖が生む「取引停止」という痛み
封鎖の狙いは、ベネズエラ産原油の代金が政権の資金源になることを断つ点にある。しかし現場で先に止まるのは、原油そのものよりも「運べる」という信用だ。Reutersは、米沿岸警備隊が国際水域で別のタンカーを追跡しており、2週間足らずで3件目の拿捕、または拿捕に向けた動きになっていると報じた。船主や保険、港湾の判断が一斉に保守化すれば、輸出入は数字以上に細りやすい。
一方で、米国の作戦は麻薬対策としても説明されている。APは、米国が制裁逃れの「影の船団」対策を強める一方、海上作戦を通じて政権への圧力を段階的に引き上げていると伝えた。原油輸出が収入の柱である国にとって、海上のリスク上昇は、国家財政だけでなく、雇用や物資の流通にも跳ね返る。封鎖は政権中枢を狙うが、痛みは物流の末端から先に広がる構図だ。
押収した石油は「戦果」か、それとも火種か
トランプ氏が示した「保持または売却」という選択肢は、制裁執行を“収益化”し得る点で異例だ。ただ、押収が恣意的に見えれば、制裁の正当性は揺らぐ。米司法省は2025年12月12日、米沿岸警備隊が12月10日に公海上で原油タンカーを拿捕した件について、連邦地裁の令状に基づく手続きだったと発表した。制裁の裏付けを、行政判断だけでなく司法手続きでも積み上げる意図が透ける。
しかし海上での緊張は、押収だけで完結しない。Reutersは、ベネズエラ近海で「麻薬密輸に関与している」と米側がみなす船舶への攻撃が繰り返され、死者が少なくとも100人に達したと報じた。米南方軍も、国際水域での船舶への攻撃を作戦として公表している。押収した石油を売るか、備蓄に回すかという会計上の判断の前に、海の秩序をどこまで軍事化してよいのかという、別の問いが残る。
