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米軍は12月17日、東太平洋で航行中の船舶を攻撃し、4人が死亡したと発表した。中南米を担当する米南方軍はXで、船は既知の麻薬密輸ルート上にあり、情報機関の確認で密輸活動に従事していたと説明した。海の上の「取り締まり」が、銃撃や拿捕よりも強い手段へ寄っていくなか、標的の見極めと説明の仕方が次の焦点になる。
海上での「麻薬対策」が生む見えにくさ
今回の発表で前面に出たのは「情報で確認した」という言い回しだ。だが、どの国の船だったのか、どのような警告や停止要求があったのか、現場で何が起きたのかといった輪郭は、現時点で十分に語られていない。公表が短文になればなるほど、正当性の根拠は「信頼してほしい」という一点に集約される。海上では、後から検証できる材料が陸上より残りにくい。
さらに難しいのは、麻薬密輸が小型船で行われることも多い点だ。取り締まりと称する行為が致死的な攻撃に直結すれば、周辺海域を通る船舶側は「疑われたら終わり」という恐れを抱く。AP通信は別の攻撃事例で、当局が密輸の具体的証拠を示していないとの指摘があると伝えている。密輸対策の実効性を上げるほど、誤認や過剰行使への疑念も同時に膨らみやすい。
繰り返される攻撃と、問われる説明責任
今回の一件は単発の出来事というより、作戦の継続線上に位置づけられている。AP通信は、9月以降に同種の攻撃が重ねられ、死者が増えていると報じた。英The Guardianも、船舶を狙った攻撃が東太平洋やカリブ海で積み上がっていると伝えている。密輸の抑止を狙う軍事行動が常態化するほど、作戦の基準は「例外」ではなく「運用ルール」として厳密さが求められる。
米南方軍は、こうした攻撃を「lethal kinetic strike」と呼ぶ。ひとことで言うと、致死的な武力行使を意味する米軍の用語だ。The Guardianは、この枠組みの法的根拠や、超法規的な殺害に当たるのではないかという批判が出ている点も紹介している。AP通信によれば、政権側が議会への説明を迫られる局面もある。密輸対策の名の下で「何が許され、何が許されないのか」を言葉で示せない限り、海の上の作戦は支持も反発も、どちらも急速に先鋭化しうる。
参考・出典
- US military says it conducted strike on a vessel in eastern Pacific, killing four men（Reuters、2025年12月18日）
- US military says strikes on 3 boats in the eastern Pacific Ocean kill 8 people
- Lethal Kinetic Strike, Dec. 4, 2025（U.S. Southern Command Press Release）
- US military says eight killed in strikes on three boats in eastern Pacific
- Lethal Kinetic Strike, Nov. 15, 2025
