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ワシントンの財務省ビルに秋の光が差し込んだ朝、財務省が2025会計年度（24年10月―25年9月）の歳出入を確定させた。赤字は1兆7,750億ドルと前年度から410億ドル縮小。関税収入の急増と教育支出の大幅削減が、金利や社会保障の膨張分を一部相殺した格好だ。年次赤字が減ったのは22年以来で、政策の配合が財政に与える影響がにわかに浮かぶ。
関税収入が押し上げた歳入、史上最高の5兆2,350億ドル
財務省が10月17日に公表した結果によれば、歳入は過去最高の5兆2,350億ドルで前年度比6％増となった。内訳では、トランプ大統領の関税導入に伴う純関税収入が通年で1,950億ドルに達し、前年から1180億ドル増の過去最高を記録した。税体系の変更が、景気循環を超えて歳入構成を動かしたと映る。
一方、歳出も7兆0,100億ドルと過去最高に膨らみ、前年度比4％増だった。医療や高齢者給付といった義務的経費に加え、利払いの増加が重石となり、全体の支出圧力はなお高止まりしている。結果として通年赤字は1兆7,750億ドルにとどまったが、構造要因の強さは変わらないとの見方が広がっている。
期末の9月は企業や個人の四半期納付が重なるため黒字になりやすいが、本年は黒字額が1,980億ドルと過去最高に膨らんだ。前年同月比で1180億ドル増、伸び率にして147％の拡大である。9月の歳入は5,440億ドル（3％増）、歳出は3,460億ドル（23％減）に抑えられ、月次の収支改善が通年の赤字縮小を後押ししたとみられる。
教育費の急ブレーキ、7月法の影響が色濃い
足元の収支を大きく動かしたのが教育関連の歳出である。7月に議会で成立した歳出・減税法により、教育省の予算は義務的に大幅削減が課された。財務省の集計では、この削減措置が集中した9月の教育支出は前年同月から1,230億ドルの減少となり、月次の歳出全体を強く押し下げた。
通年でも教育省は最大の削減部門となり、支出は350億ドルまで低下。前年度から2,330億ドル（87％）減という歴史的な減り方である。救済プログラムの巻き戻しが赤字縮小をもたらした22年を思い起こさせる動きだが、今回は政策による一斉カットが主因で、教育現場への波紋は小さくないとみられる。
もっとも、現時点で確認されている範囲では、減税措置の同時実施や歳出執行の時期調整も重なり、教育勘定の振れ幅が例年より大きく出た可能性がある。単年度のカットが恒常的な縮減に結びつくかは、来年度予算の編成と執行次第だ。政策の持続性を占ううえで、四半期ごとの推移に注目が集まる。
残る重し、利払いと高齢化の波
財政の重しはむしろ利払いに見て取れる。25年度の利払い費は1兆2,160億ドルと過去最高を更新し、前年度から830億ドル増えた。金利水準の高止まりに加え、累積債務の大きさが支出構造に固定的な圧力をかけている。単年の増収や個別歳出のカットだけでは、傾きは容易に変わらない。
社会保障関連も増勢が続いた。老齢年金を中心とする支出は通年で1兆6,470億ドルと拡大し、人口動態と物価調整が自然増を押し上げている。医療や低所得者向けの公的保険も合わせれば、義務的経費は依然として財政の中心を占め、裁量的経費の削減だけでは長期の均衡が見通しにくい構図だ。
財務省は25年度の赤字対GDP比を推計5.9％と示し、24年度の6.3％からの改善を強調した。ただ、国内総生産の確報時期が遅れる中で不確実性は残る。関税という新たな増収源が立ち上がる一方、利払いと高齢化の波は止まらない。数字が語るのは、短期の改善と中長期の課題が同居する現実である。
