米ウクライナ、物議の28項目案を修正　ジュネーブで「更新版和平枠組み」新草案

会議室の扉が閉まると同時に、参加者たちの声が一斉に落ち着いた。2025年11月23日、スイス・ジュネーブで開かれた米国とウクライナの協議で、ルビオ米国務長官は「これまでで最も生産的な一日だった」と語り、新たな和平の枠組み作りに手応えを示した。ロシアとの戦争終結を目指す28項目の案は強い批判を浴びており、両国は「更新・改良された和平の枠組み」を作成したと発表した。

米ウクライナ、批判受けた28項目案を修正へ

もともとの28項目案は、ウクライナにとって重い代償を伴う内容だった。東部ルハンスク州やドネツク州などの領土割譲、前線の凍結、ウクライナ軍の大幅な縮小、主要兵器の制限、NATO加盟の断念などが盛り込まれ、ロシアが長年求めてきた条件に近いと受け止められた。ウクライナ政府や欧州の同盟国は、主権と将来の安全を損なう「ロシア寄り」の和平だとして強い懸念を示していた。

米政府はこの案を「戦争を終わらせる現実的な道筋」と位置づけ、ウクライナに受け入れを迫ってきたとされる。トランプ大統領は感謝祭にあたる11月27日までに合意するよう求め、武器供与や情報支援の見直しに言及したとの報道もある。ゼレンスキー大統領は演説で、尊厳を守ることと主要な同盟国を失うリスクとの間で、歴史的な難しい選択を迫られていると訴えた。

しかし強い反発を受け、案はジュネーブでの協議を通じて手直しに入った。ルビオ長官ら米側とウクライナ代表団は23日の会合で、未解決の論点を洗い出し、「更新・改良された和平の枠組み」に合意したと説明した。ホワイトハウスは別の声明で、新しい草案にはウクライナへの安全の保証強化が含まれると強調し、ウクライナ代表団も自国の利益をより反映した内容だとの見方を示したと伝えられるが、キーウから独自の公式声明はまだ出ていない。

欧州案が示す「降伏なき和平」の輪郭

この場に23日夜から加わった欧州各国の代表団は、米国案を土台にしつつも別の道筋を提示した。欧州案は、ウクライナが領土をロシアに正式に譲り渡すことを認めず、占領地域の承認を拒む立場を明確にする。停戦ラインに沿って領土問題の協議を始めること、安全の保証を多国間で担保すること、将来のNATO加盟への扉を閉ざさないことなどを盛り込み、「降伏ではない和平」の条件を描こうとしている。安全の保証とは、攻撃を受けた際に他国が軍事支援や制裁で助ける約束を制度として整える仕組みだ。

さらに欧州側は、ウクライナ軍の規模をむしろ拡大し、80万程度の兵力維持を可能にする案を提示したとされる。凍結されたロシア資産は、戦争被害への賠償に充てる場合に限って解放すべきだと主張し、ロシアの戦争犯罪に対する免責を認めない方針も明確にした。米草案に含まれていたとされる新たな選挙の100日期限も削除され、ウクライナの政治プロセスに過度に干渉しない配慮がうかがえる。

一方で、この和平案そのものが誰の「作品」なのかを巡る混乱も続いている。ルビオ長官は一部の場で、28項目案は米国が起案したものだと説明したと報じられる一方、議員らにはロシア側から渡された文書であり、米政府の公式提案ではないと伝えたとされる。ロシア寄りと批判された条項の出所を曖昧にしたままでは、交渉の正当性や透明性に疑念が残るとの声もあり、米政権のメッセージはなお揺れている。

協議は今後数日続く見通しで、ルビオ長官は27日までの合意を目指しつつも時間が足りない可能性に言及している。関係者の間では、早ければ今週中にもゼレンスキー大統領が米国を訪れ、トランプ氏と直接会談する案も協議されているという。その間にもロシア軍の攻撃は続き、ハルキウなど各地で民間人の被害が伝えられる。会議場の外では砲声が続いたまま、交渉のテーブルの上だけで地図が静かに動いている。

参考・出典

• ウクライナは28項目の和平案に関し声明発出を、米政府が迫る－関係者 – Bloomberg
• 米ロが28項目のウクライナ和平案－プーチン氏の要求の多くを受け入れ – Bloomberg
• トランプ大統領　ウクライナに新和平案の合意迫る“期限は27日”
• „Keine dieser Fragen ist unüberwindbar"
• Rubio says the Ukraine peace proposal was authored by the US
• US and Ukraine promise 'updated' peace framework after criticism of pro-Russian points in original plan
• Lawmakers say Rubio distanced US from peace plan