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ベネズエラが2025年9月27日朝、全国規模の防災訓練を行う。沖合で米軍が麻薬密輸組織を標的に致死的な作戦を実施し緊張が走る中、ニコラス・マドゥロ大統領は非常権限の発動も検討している。西部で相次いだ地震が不安を重ね、国の「備え」が問われる局面である。
国境の外で高まる圧力、海上の一撃が残した影
今週、米国はカリブ海でベネズエラ発とされる密輸船を「精密攻撃」で破壊し、乗員11人が死亡したと説明した。9月3日（JST）時点で、米政権は抑止のための行動だと強調し、マルコ・ルビオ国務長官は「拿捕ではなく、破壊した」と語った。法的根拠をめぐる議論は拡大し、米議会や専門家からは国際法上の位置づけに疑義が呈されている。映像は公開されたが、標的の詳細や搭載量など決定的な情報は限られる。
作戦の狙いは「麻薬対策」の名で圧力を積み上げることにある。米側は近傍海域への艦艇と航空戦力の展開を続け、トランプ政権はマドゥロ政権を「犯罪組織」と結びつける言説を強める。一方、南米の治安当局者や調査機関は、今回名指しされたベネズエラ系犯罪ネットワークの麻薬取引での役割を相対化し、作戦の妥当性に疑問を投げかける。いずれにせよ、海上での致死的措置は従来の拿捕・押収モデルからの逸脱であり、周辺国の主権や民間人の安全にも波紋を広げる。
国内で揺れる地面、そして「非常権限」というカード
9月25日（JST）未明から昼前にかけ、西部スリア州の内陸でマグニチュード6.2と6.3の地震が連続した。震央はメネ・グランデ東北の内陸で、強い揺れが一部で観測されたが、現時点で大規模な被害情報は限定的である。震動は北部の広い範囲で感じられ、油田地帯を抱える地域社会に動揺を残した。防災の手順と連絡網が実地で試され、自治体のリスク評価や避難導線の弱点も浮かぶ。
政権中枢では、こうした不安定な地合いに合わせ「外的騒乱状態（estado de conmoción）」の布告が取り沙汰される。ベネズエラ憲法は公共の安全を深刻に脅かす事態で大統領が例外措置を発することを認め、一定の権利制限や軍・治安機関の運用拡大を可能にする。もっとも、保障の停止範囲には国際人権規約の制約がかかり、濫用は内外から強い反発を招く。与党内の結束、経済制裁下の資金手当、そして治安機関の統制という三つ巴の条件が、このカードの実効性を左右する構図だ。
27日の訓練が試すもの
マドゥロ氏は「自然災害や武力衝突への備え」を点検するとして、2025年9月27日朝に訓練の実施を告げた。学校や病院も参加対象とされ、住民の避難行動、医療搬送、通信・電力のバックアップ、要配慮者の支援動線までを一体で確かめるとみられる。現時点で詳細な実施要領の全容は示されていないが、地震直後の動揺と海上の緊張が重なるいま、訓練は単なる儀式ではなく、自治体と住民の「最後の一歩」を詰める場になる。自治会や教育現場が主導する安否確認の分担、医療のトリアージ手順、燃料と水の確保計画、そして情報の一次・二次伝達の順序。この基本が噛み合えば、仮に通信が途絶しても地域は動ける。
同時に、訓練の政治的な影も無視できない。外部の脅威を強調しつつ非常権限の発動をにおわせれば、現場の動員は「平時の防災」から「準有事の警備」へと性格を変えかねない。必要なのは、市民保護を最優先に据える透明な設計である。数の大きさではなく、避難所の鍵を誰が持つか、夜間の合図をどう共有するか、持病のある人を誰が伴走するか。そうした具体の確認こそが、緊迫する情勢の中でも地域を支える。訓練が終わるのは一日でも、備えは翌日からの暮らしに息づくべきだ。
