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ベネズエラ国会が11月30日、米トランプ政権によるベネズエラ沖や東太平洋での「麻薬対策」作戦を検証する特別委員会の設置を決めた。米軍が疑わしい船舶を空爆し、多数の死者が出ていると各紙が伝えるなか、沿岸地域では監視強化と生活不安が広がる。麻薬との闘いを名目とする軍事行動で生じた犠牲について、誰がどこまで説明責任を負うのかが、現場と国際社会の共通の問いになりつつある。
沿岸の町に広がる監視と不安
米軍による「麻薬船」攻撃の舞台となったカリブ海沿岸では、軍事作戦そのものよりも、その後の空気の変化が人びとの日常を縛っている。北東部スクレ州の漁港グイリアやカリュパノ周辺では、警察や軍、情報機関に加え、与党系の市民組織までが巡回を強めたと地元住民は証言する。もともと漁業と隣国トリニダード・トバゴとの小規模な商いに頼ってきた港では、検問が増えたことで人と物の動きが鈍り、海に出ること自体が心理的な負担になりつつある。
空爆で家族を失ったとみられる人びとも、自由に声を上げられてはいない。ロイター通信の取材に応じた住民によれば、一部の犠牲者遺族の自宅は治安当局に捜索され、「外で話すな」と念押しされたという。政府は攻撃による具体的な死者数や氏名を公表しておらず、国内で正式な遺族調査や真相究明の手続きが始まった形跡もない。海上で何が起きたのか分からないまま、港の人びとは米国の戦闘機だけでなく、自国当局の視線も意識しながら暮らしている。
こうした沿岸の町では、麻薬ルートに関わらない一般住民も、密輸容疑の疑いをかけられかねないという恐れを抱く。家計を支えてきた非公式な海上取引が止まれば、米国の作戦に対する怒りより先に、日々の現金収入が途切れる現実がのしかかる。海の向こうで語られる「麻薬との戦争」は、現場では監視と沈黙を強いる「見えない非常事態」として受け止められている。
国会が動いた理由とマドゥロ政権の思惑
こうした状況を受け、国会のロドリゲス議長は11月30日、米軍の一連の攻撃を調査する特別委員会を立ち上げると国営テレビで表明した。調査には検察も参加させるとし、米紙ワシントン・ポストが報じた特定の作戦を重点的に扱う方針だ。同紙は9月の空爆で、当時の米国防長官が「乗員を一人も生かすな」と部隊に命じ、生存者2人に対しても二度目の攻撃が行われたと伝えている。国会側は、この報道の真偽と法的責任を問いただす構えだ。
米政府は数カ月にわたり、カリブ海と東太平洋で麻薬密輸に関与したとする船舶を標的にした空爆を続けてきた。ロシア外務省は、少なくとも14隻が攻撃を受け61人が死亡したと米側の数字を引用しつつ、「対麻薬作戦としては過剰な軍事力の行使だ」と非難している。一方トランプ政権は、これを西半球での麻薬流通網を断つための正当な措置だと説明し、攻撃の詳細については多くを語っていない。
マドゥロ政権は、自国が麻薬組織と結びついているとする米司法当局の見方を一貫して否定してきた。与党側は、今回の特別委員会を通じて「米国による主権侵害」と「油田支配を狙った体制転覆工作」を世界に訴える狙いも持つとみられる。一方で、沿岸部での監視強化や遺族への圧力が指摘されるなか、国内機関が自国当局の対応をどこまで検証できるのかという疑問も残る。外国の軍事行動を追及する場が、自国の統治手法を映す鏡にもなりかねない。
麻薬対策と主権を巡る国際社会のまなざし
米国の作戦は、地域外にも波紋を広げている。ロシアは、カリブ海での米軍展開を「国際法にも米国内法にも反する」と批判し、マドゥロ政権への支持を改めて表明した。英紙ガーディアンなど欧州メディアは、米国がベネズエラ軍内部の「太陽のカルテル」と呼ばれる組織をテロ組織に指定したことを、軍事介入の口実になりうる動きとして報じている。欧州の一部では情報共有を控える動きも出ており、「麻薬テロ」認定が治安対策と政権交代戦略の境界を曖昧にしているとの懸念が強まる。
ベネズエラ政府もまた、米軍の存在感に対抗するように、自国艦艇と約1万5000人規模の軍をカリブ海やコロンビア国境周辺に展開すると発表した。互いに「麻薬との戦い」を掲げながら軍備を増やす構図のなかで、最前線に置かれるのは、小型船で行き来する漁民や移民、そして密輸ルートと見なされかねない周縁地域の住民である。空からの一撃で船ごと消える現実を前に、国際社会は作戦の効果だけでなく、標的の選定過程と被害の検証体制が適切かどうかを問う必要があるだろう。
麻薬対策と主権防衛という大義の陰で、海に出た人びとの生と死が統計の数字に埋もれないためには、ベネズエラ国会の調査も、国際的な監視も、事実に即した説明責任をどこまで貫けるかが試されている。
参考・出典
- Venezuela’s National Assembly to investigate US boat strikes | Reuters
- In remote Venezuelan state, more surveillance follows US boat strikes | Reuters
- Russia denounces ‘excessive’ US military force in Caribbean, backs Venezuela | Reuters
- Venezuela accuses US of using ‘narco-terrorism’ allegations to justify ‘regime change’ | The Guardian
- Venezuela will deploy military vessels to Caribbean and other waters to combat drug trafficking | AP News
