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ソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」が、欧州連合(EU)の新たなデジタル規制違反で1億2000万ユーロ(約217億円)の制裁金を命じられた。5日の欧州委員会の決定に対し、オーナーのイーロン・マスク氏は翌6日、自身のXで「EUは廃止すべきだ」と主張し、約2億3000万人のフォロワーに不満をぶつけた。巨大プラットフォームに誰がどのようなルールを課すのか、攻防は次の段階に入っている。
青いチェックマークは誰のための印か
欧州委員会が問題視したのは、まず利用者の目に最も触れる青いチェックマークだ。かつては本人確認済みの公的アカウントを示していたが、現在は料金を払えば多くの利用者が取得でき、身元の実質的な確認は行われていないと指摘されている。これにより、利用者は表示だけでは発信者の信頼度を判断しにくくなり、なりすましや詐欺的な投稿に巻き込まれるリスクが高まるとEU側はみている。
制裁金には、広告表示の透明性の欠如も含まれる。Xの広告データベースには、広告の内容や支払い主体など本来示すべき情報が欠けており、研究者や市民団体が政治広告や商業広告の出どころを検証しにくい状態だとされた。特に選挙や社会的な論争の局面では、誰がどのターゲットに向けてメッセージを配信しているかを追跡できるかどうかが、民主主義の質に直結するとの問題意識がある。
さらにEUは、外部研究者へのデータ提供が制限されている点も違反だと判断した。公開投稿へのアクセスに過度な条件や手続きを課すことで、プラットフォーム上でどのようなリスクが広がっているかを客観的に調べにくくしているという。利用者から見れば、タイムラインに流れる情報の裏側でどのような仕組みが働いているのかが見えにくく、事業者任せの「安全対策」に依存せざるを得ない構造が浮かび上がる。
マスク氏の反発が映す、EUとの距離感
こうした指摘に対し、マスク氏はEUがXに巨額の罰金を科した直後、「EUは廃止すべきだ」とまで書き込んだ。投稿は短い文面ながら、国家ではなく超国家的なEUが企業に細かな規制を課すこと自体への反発をにじませる。巨大テック企業のトップが、各国政府ではなくEUという枠組みを批判の対象に据えたことは、誰がインターネット空間のルール作りを主導するのかという、より広い政治的な論争とも重なる。
今回の制裁金を巡っては、一部の米政府高官や議員も「米企業や言論の自由を狙い撃ちにしている」とEUを非難しているとロイターやAP通信は伝える。一方で欧州委員会は、出身国にかかわらず全ての大型プラットフォームに同じ基準を適用していると説明し、表現内容ではなく透明性義務の履行を問題にしていると強調する。両者の主張のすれ違いは、大西洋を挟んだ規制観の違いを映し出している。
米国では、企業の自主規制と表現の自由を優先すべきだとの声が根強いのに対し、EUは利用者保護や選挙の公正さを守るために事前のルールづくりを重視してきた。Xは広告ビジネスや有料認証を柱に収益構造を再編している最中であり、そこでEUが踏み込んだことで、収益モデルと規制のせめぎ合いも鮮明になった。マスク氏の激しい反発は、その緊張が表面化した象徴的な場面と見る向きもある。
デジタルルール作りの主導権を巡る次の一手
デジタルサービス法に基づく不遵守決定は今回が初めてで、Xには約60営業日以内に是正策を提示することが求められている。青いチェックマークの表示方法をどう改めるのか、広告データベースをどこまで公開するのか、そして研究者へのデータ提供をどの水準まで認めるのか。利用者の安全とプライバシー、事業者のコストや競争上の秘密のバランスを巡り、具体的な設計を詰める作業が始まる。
EU側は、法令違反が続けば世界売上高の最大6%まで罰金を拡大できる枠組みを持つ。今回の1億2000万ユーロという額はその上限には遠いが、今後メタやTikTokなど他の大手プラットフォームにも同様の基準を適用しうるというメッセージでもある。単一の企業と規制当局の対立にとどまらず、グローバル企業が複数の法域の要求をどう両立させるかという実務的な課題が前面に出てきた。
日本を含む他地域の利用者にとっても、今回の措置は無関係ではない。大手プラットフォームはしばしば、最も厳しい規制を前提にサービス設計を統一するため、EUでの基準が世界標準に近づいていく可能性があるからだ。一方で、地域ごとに異なる仕様が並立し、サービスの断片化が進む懸念も指摘されている。誰がどこまでルール作りを担うのかという問いは、今回の罰金だけで終わらず、これからの選択を静かに縛っていく。
参考・出典
- Commission fines X €120 million under the Digital Services Act | Shaping Europe’s digital future
- EU slaps X with €120M fine in first-ever DSA crackdown on transparency violations – EU Perspectives
- Austria: European Commission fined X EUR 120 million for breaching transparency obligations under Digital Services Act – Digital Policy Alert
- 'EU should be abolished': Elon Musk erupts after Brussels hits X with a €120 million penalty
- X hit with $140 million EU fine for breaching content rules, TikTok settles
- EU hits Elon Musk's X with 120 million euro fine for breaching bloc's social media law
- 'EU should be abolished': Elon Musk erupts after Brussels hits X with a €120 million penalty
- European Commission hits Elon Musk's social network X with €120 million fine
