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韓国の特別検察官は2025年12月15日、尹錫悦前大統領が2024年12月の非常戒厳を正当化する口実を作るため、北朝鮮を挑発し武力行動を誘発しようとしたと発表した。6カ月の捜査を経て、尹氏と元閣僚5人を含む24人を内乱罪で起訴したとしている。
「非常事態」を掲げる政治が残す不信
非常戒厳は、ひとことで言うと軍が治安の名目で政治や社会の動きを強く縛る非常措置だ。Reutersは、尹氏が2024年12月3日に戒厳を出したものの、国会が短時間で無効化し、のちに弾劾へ進んだ経緯を伝えた。制度が踏みとどまった一方で、社会には「次は誰が何を名目に強権を振るうのか」という疑念が残る。
今回の発表が重いのは、対北朝鮮の緊張が国内政治の道具として扱われた疑いが正面に置かれた点だ。AP通信は、捜査側が北朝鮮を刺激するための作戦や軍事的な動きを問題視したと報じた。安全保障は本来、国民の不安を抑えるための土台であるはずだが、政争に組み込まれれば、境界線で暮らす人々の不安だけが先に膨らむ。
捜査が描く筋書きと、裁判で問われる線引き
Reutersによると、特別検察官の趙恩錫氏はブリーフィングで、権力者がクーデターを正当化する理屈は見せかけになり得るとの問題意識を示した。捜査側は、2023年10月ごろからの計画として、国会の権限を止める構想や、北朝鮮の軍事反応を引き出す試みがあったとみる。ここでは国境の緊張ではなく、国内の統治をどう変えようとしたのかが焦点になる。
内乱罪は、国家の憲法秩序を暴力で覆そうとする行為を問う重い罪だ。Reutersは、有罪なら無期懲役や死刑の可能性にも言及した。だが裁判で争点になるのは、発言や指示の危険性だけではない。非常措置の判断がどこから「政治的な排除」へと踏み込むのか、その線引きを社会が共有できるかどうかが、次の不信の連鎖を止める鍵になる。
