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ウクライナのゼレンスキー大統領が、長距離攻撃の効果でロシアのガソリン供給が最大20％減った可能性に言及した。記者団向け発言が公表されたのは2025年10月9日で、翌10日午前のビデオ演説でも燃料不足が「20％に近づいている」と強調した。国産ミサイルの実戦投入と重ね、冬を前に「燃料」をめぐる攻防が加速している構図が浮かぶ。
「20％減」の見立てが示すもの
キーウの夜気は冷たく、街の灯りは節電のため控えめだ。大統領は2025年10月9日に公表された記者団向け発言で、「確認が必要だが、攻撃の結果ロシアはガソリン供給の最大20％を失ったとみている」と述べた。断定は避けつつも、従来型の対地攻撃から補給網・燃料施設への精密打撃へと軸足を移した戦略の手応えをにじませたと映る。
翌10日11:07のビデオ演説（日本時間）でも、大統領は「ロシアの燃料不足はすでに20％に近づいている」と重ねて言及した。同氏は、ロシア側がベラルーシや中国からガソリンを取り寄せざるを得ない状況に陥っていると指摘し、長距離打撃の継続で圧力を強める考えを示した。エネルギーを戦争の重心と捉える発想がうかがえる。
こうした評価はウクライナ発のデータに基づくもので、現時点で確認されている範囲では独自推計の域を出ない。一方、ロシア側でも燃料関連施設の火災や防空迎撃の発表が相次いでおり、相互の主張は食い違う。数値の精緻さは今後の検証に委ねつつ、補給線への圧力が現実の政策手段になっていること自体は否定しがたい。
国産ミサイルが支える「長距離」の手
大統領は最近の攻撃で、国産の巡航・対艦系「ネプチューン」と長射程の「フラミンゴ」を用いたと明らかにし、国内防衛産業の拡大を戦略の中核に据える姿勢を見せた。投入規模は伏せたが、「命中精度は上がっている」との説明を添え、量より質でロシアの広大な後方を突く方針をにおわせる。
ウクライナは外部供与兵器に依存しつつ、自前の生産基盤を育ててきた。西側の供与制約や弾薬逼迫を補うには、標的選定とセンサー・通信の統合が欠かせない。国産ミサイルの実戦投入は、補給・生産・運用を自国内で循環させる試みの一里塚であり、継戦能力の底上げを狙うものだとみられる。
一方で、ロシアも防空網の再編や施設の分散化で応じており、快進撃一辺倒ではない。打撃の成果は、敵の修復力や迂回輸送の余地に左右される。冬季に向けた電力・燃料の需要期が迫るなか、互いの「後方」にどこまで持続的に圧をかけられるかが次の分岐点になりそうだ。
前線の手応えと、外交のにらみ合い
大統領は東部での反攻が「夏のロシア軍の攻勢を乱した」と強調した。ロシアがドンバス大半の掌握を年内に狙う意図を米側に伝えていたが、達成は阻まれているという見立てだ。米露が戦争終結像で一致していないとも述べ、「ロシアの主張が虚偽であることを米国は理解している」と語気を強めた。
外交面では、米国との新たな協議に向けた準備を進めるとした。防空やエネルギー、対露制裁が主題になるとの見通しで、前線の手当てと後方の防護を同時に固める意図が透ける。大統領は長距離打撃と制裁の相乗効果を掲げ、「ロシアにコストを支払わせる」包囲網の強化に踏み込む構えである。
ただし、ロシア側は迎撃能力の誇示や輸入振り替えで影響は限定的だと主張する。一部報道では燃料不足の波及も伝えられるが、実需や備蓄の厚みが見えにくいのも事実だ。数字の攻防を越え、補給の途絶や電力の不安が人々の生活に落とす影は濃い。冬の足音が近づくほど、攻撃と修復の応酬は苛烈さを増すだろう。
