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机上のリストに新しい印が増えた。政府が、経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に、無人航空機(ドローン)や船体など5物資の追加指定を検討に入った。民間投資を後押しし、不測時にも供給が途切れない道筋を確保する狙いである。近く取りまとめる経済対策と今年度補正予算に位置づけ、年内の政令改正を目指すという。出来事の先に見えるのは、産業基盤を静かに底上げする意思である。
狙いは供給網の底上げ
特定重要物資は、安定供給が滞ると社会や経済への影響が大きい品目を国があらかじめ特定し、サプライチェーン(供給網)の維持・確保に向けて投資や研究開発を後押しする枠組みである。指定後は、生産設備の整備や代替調達の開拓など、平時からの備えを促す設計になっている。企業の自助努力だけに寄りかからず、国の関与で“切れ目のない供給”に近づけるのが骨格である。
これまでに重要鉱物や半導体、蓄電池、肥料など12物資が対象となってきた。今回、政府関係者の説明として示されたのは「船体を構成する部品」「無人航空機」「人工衛星・ロケット部品」「磁気センサー」「人工呼吸器」の5類型である。既存の指定に製造装置や素材が並ぶのに対し、社会インフラや医療、防災・宇宙まで視野を広げ、供給網の盲点を埋める狙いが読み取れる。
広がる無人機、縮む造船をどう支えるか
無人航空機(UAV)は、農薬散布やインフラ点検、災害時の初動把握まで用途が急速に広がる。海外では軍事利用を含めた導入競争が進み、部材やソフトを含む供給網の“偏り”は安全保障上の課題として扱われている。指定されれば、センサーや通信機器、制御系の国産化や多重調達の仕組みづくりに弾みがつく可能性がある。需要の伸びとリスク低減を同時に進める道筋を描くことが要る。
一方、船体を構成する部品は、既に対象となっている「船舶の部品(エンジン等)」とは切り口が異なる。事業者の撤退や人手不足で国内の建造能力は縮小傾向にあり、海上輸送に依存する貿易の足腰をどう保つかが問われてきた。船殻の板材加工や艤装、溶接の高度化など、現場の生産力を底から支える投資は時間を要する。特定重要物資の枠組みで資金や人材育成の道を開けるかが焦点である。
医療と宇宙で見える輸入依存の壁
人工呼吸器は急性期から慢性期まで幅広い疾患で使われる生命維持装置である。国内需要の安定を考えると、部品・消耗品まで含めた調達線の整備は欠かせない。感染症危機で露呈した輸入依存の脆さを教訓に、保守・点検を担う人材や施設の確保も含めた“使い続けるための供給網”を組み込むことが求められる。指定が実現すれば、平時からの在庫や代替品開発への支援が具体化しやすくなる。
人工衛星・ロケットの部品、磁気センサーは、宇宙・防災や自動運転、資源探査などの基盤技術を支える要素である。衛星打ち上げ需要の増加に対し、材料や精密加工で海外依存が残る分野は少なくない。磁気センサーは微弱な磁場を測る部品で、位置推定や異常検知に幅広く使われる。供給が滞れば複数の産業が同時に遅れる可能性があるため、分散調達や国内生産の再構築に公的支援を差し向ける意義は小さくない。
制度の仕組みと今後の見通し
経済安全保障推進法は、重要な物資・サービスの安定供給を平時から確保するための枠組みである。特定重要物資に指定されると、設備投資や研究開発、代替調達の仕組みづくりに対して公的支援が可能になる。政府は経済対策と補正予算に関連費を計上し、政令改正で指定を発効させる段取りを描く。2025年11月11日時点で示された5物資は「検討中」の段階であり、最終確定は政令公布後となる。
企業側にとっては、資金面の後押しとあわせて、中長期の供給計画づくりや在庫・代替手段の確保が要点になる。政府にとっては、支援の重点を現場のボトルネックに的確に当て、効果検証を継続することが重要である。指定の拡充は、個々の製品の話に見えて、労働力や技術承継、国際調達の再設計までを含む“産業の手当て”にほかならない。
静かな準備の積み重ねが、次の展開を待っている。