ガザ暫定行政案にブレア起用を検討

2025.09.27

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ガザの「戦後」をめぐり、国連と湾岸諸国の支援で暫定行政機構を設け、そのトップにブレア元英国首相を起用する案が動き出している。米政権が後押しする構想で、国連総会の場ではパレスチナ国家承認の波も広がった。実現すれば、破壊と空白が続くガザの統治をつなぐ中間ステップとなり得る一方で、政治的な地雷原を歩む難事業でもある。

ブレア氏に白羽の矢、暫定機構の設計図

複数報道によれば、案の中核は「ガザ国際暫定行政機構（GITA）」の創設である。国連の承認を前提に、最長5年の期限で行政と法の最高権限を担い、その後にパレスチナ人主体の恒久統治へ引き継ぐ青写真だ。運用初期はガザ南のエジプト側で立ち上げ、治安が整い次第に現地へ移る。旧コソボや東ティモールでの国際統治モデルを参照し、文民の行政部門と司法監督、治安は多国籍の安定化部隊が支える。

トップ候補に挙がるブレア氏は、中東和平の「カルテット」特使を務めた経験がある。イスラエルや湾岸各国に幅広い連絡網を持つ点が評価されている。もっとも、住民の強制移動や移住促進を含む案は支持しないと側近は明言しており、「ガザはガザの人々のもの」という原則を強調している。権限設計では、独立のパレスチナ人テクノクラートが実務を担い、外部は監督と安全保障に徹する案が軸とみられる。

国連総会の空気、承認の波とアッバス発言

国連総会の会期に合わせ、仏大統領が9月22日にパレスチナ国家の承認を表明し、複数国が続いた。前日には英、カナダ、豪が同調し、欧米の一角が二国家解決へのコミットを可視化した格好である。承認は直ちに国連加盟国としての地位を意味しないが、停戦と統治移行の「背骨」を国際社会が形にし始めたことは確かだ。

25日にはパレスチナ自治政府のアッバス議長が総会で演説し、戦後ガザの統治には自らの政府が責任を負う用意があると語った。武装組織の関与は認めず、武装解除を条件に治安と行政を担う考えを示した。近時の国家承認の動きに謝意を述べる一方で、単なる象徴に終わらせず、占領の終結と人道アクセスの恒常化を求めた。

なお残るハードル、イスラエルの反発と治安設計

最大の関門は当事者同士の同意である。イスラエル政府は国家承認の連鎖を「テロへの報酬」と強く批判し、ガザの将来像でも警戒を崩していない。暫定機構を国連安保理が承認するには、域内の安全保障枠組みに実効性が求められる。住民保護と人道輸送路、地上での治安をどう担保するかは、どの案でも要諦となる。

米側では中東特使が「包括的だ」と語る計画づくりを進め、ブレア氏は8月26日にホワイトハウスでガザの「翌日」を巡る協議に参加した。停戦や人質解放と復旧の工程表、暫定機構の権限と検証可能なマイルストーンが並走しなければ、統治移行は絵に描いた餅に終わる。現地の行政人材と治安部門をどう再建するかも難題で、域内のアラブ諸国がどこまで肩を入れるかが安定の鍵を握る。

何が変わるのか、移行統治の記憶とガザの現実

国際社会が統治を肩代わりする移行期の成功には三つの条件がある。第一に権限の明確さで、誰が何を決め、いつ民主体制へ返すかを法的に刻むこと。第二に治安と司法の分離で、対テロと住民保護を同列に置かず、警察と裁判の独立を保つこと。第三に現地のオーナーシップだ。公共サービスの復旧やインフラ再建は、外から「してあげる」のでなく、地元の自治体と技術者が主役になる設計が要る。

ガザでは生活基盤の破壊と難民化が長期化し、人道支援だけでは自治の筋肉が痩せていく。暫定機構が機能するなら、学校と病院、上下水道や電力、港湾と検問の管理まで、日常を回す現場の人材を早期に編成し、資金と資材の流れを透明化することが要る。住民の私有財産権や帰還権を守る仕組みも不可欠で、移行統治の「副作用」である既得権の固定化を防ぐ制度設計が求められる。

戦後像をめぐる案は入り乱れるが、いずれも「空白を作らない」点では一致する。国家承認の波は交渉の地図を塗り替えつつあり、ガザに関しては外部が主役ではなく、最終的にパレスチナ人が自らの自治を取り戻す道筋をどう具体化するかが問われる。9月27日 18:00（日本時間）現在、ブレア案は関係国の根回しが続く段階にある。次の一手は、停戦と統治移行の現実的な接続を示せるかにかかっている。