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中国の王毅外相は2025年12月30日、北京で開かれたシンポジウムで、日本の現職指導者が台湾を巡って中国の主権に踏み込む発言をしたとして日本を批判した。名指しは避けつつ、高市早苗首相の国会答弁を念頭に置いた発言とされる。安全保障の言葉が前に出るほど、日中の意思疎通の「余白」が削られる点が焦点になる。
台湾有事の答弁が外交の火種に
王氏の発言は、台湾問題をめぐる中国側の立場を改めて強調する文脈に位置づく。日本側の発言を「領土・主権」問題に接続して批判する形を取ることで、外交上の争点を安全保障の一般論ではなく、より踏み込んだ「核心的利益」の領域に寄せた格好だ。結果として、外相級や首脳級の対話が続いていても、発言の応酬が政治日程を縛る展開が起きやすい。
背景には、高市首相が国会で台湾有事と日本の集団的自衛権の関係に言及し、撤回しない姿勢を示してきたことがある。「存立危機事態」（日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合などに武力行使を可能にする枠組み）は、発生後に政府が個別具体で判断する制度だが、仮定の議論でも近隣国は政策シグナルとして受け止める。国会の質疑応答が、そのまま外交コストに変わる局面と言える。
対話を掲げつつ、言葉のコストをどう抑えるか
日本側は、対中関係を「建設的かつ安定的」に保つ方針を繰り返してきた。一方で、台湾情勢をめぐる抑止や危機管理は国内でも関心が高く、首相が答弁で踏み込めば支持層への説明にはなるが、中国側が強く反応する余地も広がる。
論点は、抑止のための明確さと、偶発的な緊張を避けるための曖昧さのどこに線を引くかだ。あいまいさを残せば「実際の判断は状況次第」と言える半面、相手側は最悪のケースを前提に読み替えやすい。逆に踏み込みすぎれば、協議の場で調整できる選択肢が先に痩せる。政府間のホットライン整備や危機時の連絡手順といった実務を、言葉の応酬とは切り分けて積み上げられるかが問われる。
