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画面越しの握手が交わされたのは2025年10月21日。中国の王文濤商務相とEUのシェフチョビッチ欧州委員がオンラインで向き合い、レアアースの輸出規制などを巡る溝を詰めた。双方は輸出管理対話をブリュッセルで早期開催することで一致し、揺れるサプライチェーンに一息入れる道筋が見えたといえる。対立の芽を抱えつつも、実務的な接点を探る動きが加速している。
画面越しの握手、焦点はレアアース
会談は2025年10月21日に行われ、中国側の発表によれば、レアアースの輸出管制、EUの対中EV反補助金調査など幅広い議題で意見を交わした。王文濤氏は、最近のレアアース輸出管制は法律に基づく制度整備という「正常な行為」だと述べ、EU企業の申請に対する審査を便宜的に進めてきたと強調した。欧州の関心が高い許認可の扱いに正面から触れた形である。
中国側の説明では、欧州のシェフチョビッチ氏も、国際的な安全保障の観点から中国の措置を理解すると応じ、欧州企業の申請審査を加速するよう求めたという。欧州委は一方で、中国の輸出規制が供給網に影響を与えていると繰り返し指摘しており、対話の継続が不可欠だと映る。互いの論点が交差し、歩幅合わせの難しさもにじむ。
今春以降の輸出管理強化は、米中対立の高まりを背景にした動きだとみる報道もある。現時点で確認されている範囲では、中国は「世界の産業供給網の安定に資する」との立場を崩していない。企業現場では、許認可の透明性と予見可能性をどう確保するかが切実な課題として浮かぶ。制度の狭間に置かれた現実がある。
ブリュッセルで輸出管理対話へ
双方は、輸出管理を巡る中欧の対話メカニズムを「アップグレード」し、ブリュッセルで早期に会合を開くことで一致した。開催時期や議題の詳細は示されていないが、手続や適用範囲の明確化、例外規定やグリーンチャネルの運用が俎上にのるとみられる。現場の申請処理に直結する実務的協議が想定される。
欧州は「デリスキングであってデカップリングではない」との方針を掲げ、中国依存の高い分野の脆弱性を減らす構えを明確にしている。他方で、対話の扉を閉ざさず、WTOの枠組みを重視する姿勢も崩していない。相反する要請の折り合いを、制度設計でどう付けるかが焦点となる。規律と柔軟性の微妙な均衡が問われる。
ブリュッセルの会議室に持ち込まれるのは、希土類に限らない。半導体、EV、医療機器まで広がる広範な産業の利害である。許認可の迅速化と安全保障審査の厳格化という二律背反を、企業が日々の調達と投資計画に落とし込める水準へ近づけられるかが問われている。対話の成否は現場の実感で測られる。
ネクスペリアを巡る火種
オンライン会談では、オランダ発祥で現在は中国・聞泰科技の傘下にある半導体メーカー、ネクスペリアの問題も取り上げられた。王氏は、オランダ側に「可能な限り速やかな適切な解決策」を示すよう求め、EUが建設的な役割を果たすことへの期待を伝えた。サプライチェーンの安定に関わる火種の鎮火は見通せない。
同社を巡っては、安全保障を理由とする政府の関与が続き、投資や経営の自由度が揺らいでいるとの懸念が広がっている。中国側は「国家安全保障の概念の過度な一般化」に反対する姿勢を改めて示し、契約と市場の原則に立ち戻るよう促した。だが、各国の警戒感は根強く、判断は容易ではない。
レアアースの輸出管理、産業補助金、対内投資審査。個々の論点は別々に見えて、供給網の安定という一本の線でつながっている。年末に向け、中欧がブリュッセルの対話でどこまで歩み寄れるのか。企業は足元の手当てを続けつつ、次の規律の輪郭を待っている。確かな羅針盤を求める声が広がっている。
