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米中の摩擦が続くなか、中国が9月に米国産大豆の輸入をゼロにした。2018年11月以来7年ぶりの「ゼロ」で、買い付けは南米に傾いたままである。世界最大の需要国が仕向地を変えると、相場だけでなく農家の現金収入や物流の流れにも跳ね返る。交渉のテーブルで、大豆が再び試金石となっている。
ゼロが告げた重さ、港に並ぶ南米船
沿岸の穀物バースに寄港する船籍は、ブラジルやアルゼンチンが目立つようになった。中国税関のデータを基にした報道によれば、2025年9月の米国産大豆の輸入量は前年同月の170万トンからゼロに落ち込み、2018年11月以来のゼロとなった。報道は2025年10月20日 12:28に伝えられ、現場の空気は一段と冷え込んだと映る。
一方で全体の輸入は膨らんだ。9月の大豆輸入は1287万トンと過去2番目の水準に達し、うちブラジルからの到着は前年比29.9%増の1096万トンで全体の85.2%を占めた。アルゼンチンも91.5%増の117万トンと存在感を増す。岸壁に並ぶ南米船の列が、調達の重心が移ったことを雄弁に物語る。
関税が変えた買い付けの地図
背景には、米中の応酬で積み上がった追加関税がある。関税の上乗せが続くなか、米国産の採算は悪化し、買い手は価格優位の南米産へ流れている。市場関係者の間では、今年の古穀が一巡しやすい時期とも重なり、米産の船積みが見送りやすくなったとの見方が広がっている。
米中交渉は再始動の兆しもあるが、当面の船積み枠は南米で埋まりつつある。年明けまで再調達の糸口が見えなければ、春先に原料が締まる局面もあり得るとの声も一部にある。もっとも、中国側が備蓄や代替油糧で吸収する余地も指摘され、需給の綱引きはなお続くとみられる。
交渉の焦点としての「大豆」
注目すべきは、年初からの累計では米国産の受け入れが前年を上回っている点である。1〜9月の米国産は1680万トンで15.5%増とされ、前半の契約が下支えした。足元のゼロは象徴的だが、交渉の進展次第で航路は再び動く。その意味で、大豆は二国間の温度計としての役割を失っていない。
中国が南米偏重を強めるほど、米国の産地は収穫期の現金化に痛手を受ける。一方の中国も、南米の天候や物流に左右されやすくなる。関税の緊張をどこで緩めるのか。交渉の譲り合いが現場のサイロや圧搾工場の稼働に直結する構図が浮かぶ。視線は次の船積みと次の合意に集まっている。
