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中国軍機による航空自衛隊機へのレーダー照射が明らかになった直後の12月7日、中国海軍が日本の発表内容に強く異議を唱えた。自衛隊機が海軍の訓練空域に何度も近づき、通常の訓練を乱し飛行の安全を大きく損ねたと主張している。一方、防衛省は中国側の行動こそ危険だとして抗議しており、「どちらの行為が安全を脅かしたのか」という問いが、東シナ海の空で改めて突き付けられている。
レーダー照射が意味する「一触即発」の重さ
防衛省によると、問題のレーダー照射は12月6日夕方、沖縄本島南東の公海上空で2度発生した。中国海軍の空母「遼寧」から発進したJ15戦闘機が、対領空侵犯措置のために上がった航空自衛隊のF15戦闘機に対し、火器管制用とされるレーダーを断続的に向けたと説明している。物理的な被害はなかったが、日本政府は航空機の安全な運用に必要な範囲を超える危険な行為だとして、外交ルートで中国に強く抗議した。
レーダー照射は、目標の位置を高精度で追尾し、ミサイル発射にもつながり得る信号だとされる。機体に搭載されたセンサーが警報を発した瞬間、パイロットは「次に何が来るのか」を警戒せざるを得ない。自衛隊機は国際法上の公海上空を飛行していたとされるが、近傍では民間機の航路や漁船の活動も重なりうるだけに、軍同士の駆け引きが思わぬ巻き込み事故を招きかねないとの懸念も出ている。
日本周辺では、中国軍機の活動増加に伴い、自衛隊機の緊急発進が常態化している。2013年には中国海軍艦艇が海上自衛隊護衛艦に射撃用レーダーを向けたとされる事案もあり、レーダーをめぐる対立は今回が初めてではない。頻度が高まる監視活動の中で、一度の判断ミスや誤認が急速な緊張のエスカレーションにつながる構図が、現場のパイロットに重い負担を強いている。
真っ向から食い違う主張、映し出される日中の溝
こうした日本側の説明に対し、中国海軍の報道官は7日、「自衛隊機が海軍の訓練海域とその上空に繰り返し近づき、正常な訓練を妨げた」とする談話を発表した。訓練の位置は事前に公表されていたと強調し、日本が危険性を強調して発表したことを「事実と一致しない宣伝だ」と批判している。さらに日本側に対し、前線部隊の行動を厳しく抑え、中傷をやめるよう求めたが、肝心のレーダー照射の有無については触れなかった。
日本政府は、今回の飛行が国際法上の公海上空であり、他国の軍事演習を監視すること自体は多くの国が行っていると説明している。一方、中国側は「訓練海域」として事前に示した範囲への接近を問題視しており、どこまでを「正当な監視」とみなし、どこからを「危険な接近」と判断するかで、両国の認識は大きく分かれている。法解釈と軍事的慣行が絡む難しい境界線が、今回の応酬にもにじむ。
背景には、台湾情勢をめぐる緊張の高まりや、日本の安全保障政策の転換がある。日本の首相による「台湾有事が日本の存立に関わり得る」との発言以降、中国は海空での活動を一段と強めており、米豪など同盟国も日本側への支持と自制の両方を呼びかけている。レーダー照射を巡る今回の対立は、日中双方が「自国の防衛」と「相手の挑発」を同時に主張し合う構図を改めて浮き彫りにしたともいえる。
危険との非難を投げ合うだけでは、前線で相手機と向き合う搭乗員のリスクは減らない。訓練や監視の枠組みをどう共有し、どの行為を越えてはならない一線とするのか、今回の事案は両国と周辺国に静かな課題を突き付けている。
