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報告書が公表された会見場で、分厚い冊子のページが静かにめくられていった。防衛省のシンクタンク、防衛研究所が2025年11月20日にまとめた「中国安全保障リポート2026」は、中国とロシア、北朝鮮の結び付きが、台湾や東・南シナ海、朝鮮半島を含むインド太平洋の安全保障を揺らしていると警鐘を鳴らす。
中ロ朝の「不均衡なパートナーシップ」がもたらす緊張
リポートは16回目の刊行となり、中国の安全保障政策を分析する恒例の年次報告である。今回の焦点は、中国、ロシア、北朝鮮の関係に置かれ、「不均衡なパートナーシップ」と位置付けた。中国が経済力と軍事力で頭一つ抜ける一方で、ロシアと北朝鮮もそれぞれ核戦力や兵器供給で存在感を示し、3者関係は本格的な軍事同盟には至っていないが、利害が完全には一致しないまま協力が進む構図を描いている。中ロの合同軍事演習や海空の共同パトロールが常態化し、中国軍の作戦能力を底上げしていると分析する点も特徴だ。
ロシアについてリポートは、ウクライナ侵略で国際規範の効力を弱めつつ、核兵器の威嚇や北朝鮮の軍事力強化を通じて西側に「恐怖のカード」を突きつけていると指摘する。北朝鮮は兵器供与や派兵の見返りに軍事技術や現代戦の経験を得ているとされ、その結果、核・ミサイル能力の一層の向上が懸念される。2025年9月3日に北京で開かれた抗日戦争勝利80周年の記念行事で3首脳が並び立った場面は、「日米韓」と「中ロ朝」が向かい合う陣営化の兆しとして受け止められており、北東アジアの安保環境に長期的な影を落としている。
台湾周辺で高まる圧力と、続く米中競争
台湾情勢について、リポートは2022年に米国のペロシ下院議長が台北を訪れて以降、中国人民解放軍が台湾周辺での訓練を大幅に強化したと記す。軍用機や艦艇が島を取り巻く形で展開する演習は、封鎖や上陸作戦を想定したシナリオと重なるとみられ、平時と有事の境目を曖昧にする動きでもある。台湾の政権交代や米台関係の変化に応じて、こうした活動の烈度を随時引き上げられる態勢にあると分析しており、偶発的な衝突リスクだけでなく、心理的圧力の高まりにも注意を促している。
一方で、米中対立の構図そのものは大きく変わっていないという見方も紹介される。第2次トランプ政権の対中政策を巡り、中国の専門家の多くは、米国の同盟ネットワークは維持され、先端技術分野でも対中輸出管理や投資規制などの競争戦略に根本的な変化は生じていないと評価している。政権の顔ぶれが変わっても、日米韓を含む同盟網と、中国を軸とする中ロ朝の関係が、台湾や東・南シナ海、朝鮮半島を取り巻く不確実性をじわりと押し上げているという、静かな力学が浮かび上がる。