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中国の傅聡国連大使が、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に反発し、グテレス国連事務総長に2度目の書簡を送った。2日午前の閣議後会見で木原稔官房長官は、書簡の発出を把握しているとした上で、中国が主張する「日本の立場の変更」は事実ではないと強く否定した。国連を舞台にした応酬は、台湾情勢と日中関係に何を映し出しているのか。
国連の書簡合戦が日本社会に投げかけるもの
今回の書簡は、中国側による日本批判としては2通目だ。先月の1通目に対しては、日本の国連大使が反論文書を提出し、全加盟国への配布を求めた経緯がある。応酬が重なる中で、国会の発言が国内政治の範囲を超え、国連という公的な舞台で争われる局面に入ったことがあらためて浮き彫りになった。
木原官房長官は会見で、中国側の主張を「到底認められない」としたうえで、日本の立場に変更はなく、その点を繰り返し中国側に伝えていると説明した。事実と異なると考える主張に反論を続けることには、国際社会の中で公式見解を明確に位置づける意味もある。国連書簡は単なる抗議文ではなく、各国が自らの立場を記録として残す外交ツールでもあるからだ。
一方で、国内の受け止めは必ずしも一方向ではない。各紙の世論調査では、高市首相の台湾有事を巡る発言を「適切」とみる人が半数を超えるとされる一方、紙面では日中関係の悪化を懸念する論調が際立つ。世論の評価と報道の焦点にわずかなずれが生じたまま議論が進めば、情勢判断を誤りかねないだけに、こうした温度差にはいっそう注意が求められる。
「立場は変わらず」と強調する日本政府の狙い
日本政府が繰り返すのは、「台湾に対する立場は変わっていない」というメッセージだ。木原官房長官は先月、台湾海峡の平和と安定が日本と国際社会の安定にとって重要であり、台湾問題の平和的解決を期待するという従来の方針をあらためて説明している。1972年の日中共同声明で示した、中国の「一つの中国」という立場を尊重する姿勢も変えていないと各メディアに語ってきた。
今回、中国が問題視しているのは、高市首相が台湾有事は日本の存立危機事態になり得ると述べた点だ。これは、2015年に成立した平和安全法制の枠組みの中で、どのような場合に集団的自衛権の行使が認められ得るかを問う議論の延長線上にある。政府側は、新たな発想ではなく既存法制の適用可能性を説明したに過ぎないと位置づけ、「立場の継続性」を前面に出している。
他方で、中国は、首相発言が台湾問題への武力介入の意図を示したものだとみなし、戦後の国際秩序への挑戦だと批判している。立場は変わらないと強調する日本と、発言の意味合いを拡大して受け止める中国。その認識ギャップを埋めることなく応酬だけが続けば、誤解が固定化されかねない。日本側が「説明」と「反論」を同時に積み重ねる背景には、その危うさへの警戒もある。
エスカレートする応酬と、対話をどうつなぐか
国連の場でのやり取りは書簡だけではない。先月には、在日中国大使館がSNS上で国連憲章の「敵国条項」を持ち出し、日本が再び侵略政策に向かった場合には中国が安保理の承認なく軍事行動を取る権利があると主張した。これに対し、日本の外務省は同条項は国連総会決議で死文化していると反論している。法解釈をめぐる議論まで前面に出る構図は、緊張の深さを物語る。
中国は他国との対立局面で、輸入規制など経済的手段を通じた圧力を強めることがあると、欧米メディアはたびたび指摘してきた。日本に対しても旅行や貿易の分野で影響が広がれば、外交的な応酬は企業活動や地域経済にも波及しかねない。国連での書簡合戦は象徴的な出来事だが、その背後には、人やモノの流れを左右し得る現実のリスクが横たわっている。
木原官房長官は、中国側の事実に反する主張には反論していく一方で、対話の機会も模索する考えを従来から示している。日本がどこまで毅然とした姿勢を保ちつつ、緊張を管理し、台湾海峡の安定という共通利益を国際社会と共有できるか。国連で交わされる一通一通の書簡は、その難しいかじ取りの一端を映している。
