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機材を載せた台車が往復し、案内板の角度が何度も直される。アマゾン川河口のベレンで、国連の気候会議COP30が10日に始まる。開幕前、ブラジルのソニア・グアジャジャラ先住民相はAFPの取材に、先住民が会場で主導的に関わる意義を語り、自然保護と暮らしを両立させる視点を世界に示したいと話した。
動き出すアマゾンのCOP、焦点は現場の声
会議はベレン市のコンベンション施設で2025年11月10日から21日まで開かれる。気候変動の影響が深まるなか、アマゾンの只中で各国が向き合うという設定は象徴的で、移動や宿泊の準備が進む街の空気にも期待と緊張が同居している。議場の導線やセキュリティが整えられ、各国代表団の車列が順次リハーサルを重ねる様子からも、今回は「現場の温度」を携えた議論への期待がにじむ。
焦点のひとつが、先住民を含む地域コミュニティの経験をどう政策に組み込むかだ。気候危機の最前線にいる人々の知恵は、炭素の数字や資金動員の表だけでは測りきれない。森の中で生きる技法、洪水や干ばつの予兆を読む感覚、土地に根ざした合意形成の手順。そうした「場の知」が持つ説得力を、国際交渉の言葉へどう翻訳するかが問われている。
ブラジルで初代の先住民相を務めるグアジャジャラ氏は、グアジャジャラ・テネテハラ民族の出身だ。先住民運動の現場で培った交渉力を背景に、各国の首脳や市民社会との橋渡し役を担う。同氏は今回、先住民自身が議題の設計や評価にも関わる「参加の質」を高める考えを示し、周辺行事から本会議まで横断的に声を届ける方針で臨む。
先住民が受け止める変化、暮らしへの響き
同氏は取材に、気候変動の影響が先住民の土地だけでなく大都市の周辺でも現れていると語った。洪水や深刻な干ばつが重なり、生活の段取りそのものが揺さぶられているという。川が増水すれば水が濁り、魚が減る。逆に渇けば河道が浅くなり、集落と町をつなぐ移動が滞る。そうした連鎖は収入や食卓に直結し、家族の予定表を静かに書き換えていく。
学校や診療所も例外ではない。増水で通学路が寸断され、干ばつで船便が止まると、授業や通院の計画が崩れる。行政の支援が届くまでの間、地域は互いの舟や小径を融通し、学びや医療の機会をつなぐ。紙の上では小さく見える「遅延」が、子どもの学習や高齢者の健康にとっては大きな意味を持つことを、住民は身をもって知っている。
それでも森とともにある暮らしは続く。増水の後に川の匂いが変わること、乾季の風が葉の裏を鳴らす音が続けば雨が近いこと。そうした手触りのある記憶が、対策の優先順位や地域の合意に生かされる。グアジャジャラ氏は「私たちは森や環境、生物多様性の最大の守り手と認識されているが、最初に、そして最も影響を受けるのも私たちだ」と述べ、現場の経験を政策へ橋渡しする必要性を強調した。
森を守る実践を議場へ、主役としての参加
同氏は、先住民が会議に参加すること自体が自然保護の実践を可視化すると語る。先住民の存在が、清潔な水や多様な生き物、農薬に頼らない食べ物、そして立ち続ける森林を支えてきたという認識は、各国の研究や現地の体験から積み重ねられてきた。だからこそ「先住民なくして、人類の未来はない」という言葉は、挑発ではなく日常の写し取りに近い。
今回は先住民の参加がこれまでで最も厚みを持つとの見立ても示した。交渉の文言作成だけでなく、融資の配分や監視の仕組みにまで、先住民の意思決定を組み込む発想が広がるかが鍵になる。資金の流れが地域の権利や土地の保全に直結するか、知識の共有が一方通行にならないか。現場で育まれた知恵を、国際合意の推進力へ変える段取りが求められる。
ブラジルでは約170万人が先住民として暮らし、数百の民族集団に分かれて多彩な言語と文化を受け継いできたとされる。アマゾンの入り口に世界が集まる今回は、その多様な実践がひとつの舞台で並び、差別の問題や土地の権利といった課題にも光が当たる見通しだ。夕方の湿った風が会場の旗を揺らす。議場の明かりは、森で続いてきた日々の延長に置かれている。