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東南アジア諸国連合に日米中などを加える「東アジアサミット」が2025年10月27日にマレーシアで開かれた。南シナ海で実効支配を強める中国に対し、各国から反発と懸念が相次いだ。フィリピンは中国の自然保護区計画を主権侵害とみなし強く抗議の姿勢を示し、日本も威圧的な活動の強化に憂慮をにじませた。地域秩序の揺らぎが静かに浮かぶ一日となった。
静かな会場に積み重なる違和感
クアラルンプールの会場に各国首脳が入ると、静けさの奥で南シナ海という言葉だけが重く響いた。議長国マレーシアのアンワル首相は対話と協調を選ぶべきだと呼びかけ、緊張の渦に飲み込まれぬよう針路を示したと映る。会議は安全保障から経済まで幅広い議題を抱え、地政学の軋みが空気を押し広げていた。
東アジアサミットはASEANと日米中印豪などが一堂に会して政治・安全保障を扱う場である。今回は特に南シナ海の法の支配や航行の自由が焦点に据えられた。会合の形式は静かでも、発言の行間には力学の変化が滲む。誰がどこまで踏み込むのか、微妙な駆け引きが積み重なる場面が続いたとみられる。
一方で、経済連携の糸口を探る動きも途切れていない。供給網の強靱化や通商の再設計といった課題は、軍事的緊張と裏腹の関係にある。安全保障の不安が市場心理に影を落とすからだ。ゆえに各国は対立の言葉を控えつつ、実利の接点を繋ぎ止めようとしている構図が広がっている。
フィリピンの抗議、焦点はスカボロー礁
火種の中心にいるのがスカボロー礁だ。中国は2025年9月、同礁周辺に自然保護区の設置を表明した。環境保護を掲げる発表だったが、フィリピン側は実効支配を既成事実化する新たな段階だと受け止めた。ミスチーフ礁の前例が脳裏をよぎる。構造物が積み上がれば、景色は一気に変わるという記憶が残る。
フィリピン軍トップは、この計画を占拠の口実とみなし、軍事化を許さない姿勢を明確にした。2016年の仲裁判断が示した法の枠組みを拠り所に、外交抗議や監視活動を強める構えである。スカボロー礁は伝統的な漁場でもあり、海に生きる人々の営みが政治の決定で左右される現実がある。
サミットの場でも、フィリピンは主権を侵す行為だとして強い言葉を投げたとみられる。各国からも緊張を高める一方的な動きへの懸念が重なった。環境の名を借りた規制が、新たな常態化の装置になるのではないか。会場の空気には、そんな疑念が静かに溜まっていった。
日本の立場、法の支配で結ぶ
日本は会期中、マレーシアとの首脳会談で南シナ海情勢を含む地域課題を議論した。自由で開かれたインド太平洋を掲げ、能力構築支援の拡充や海上安全保障の連携を確認し合った流れである。現地で外相も関連会合に臨み、威圧的な活動の強化に対する懸念を共有したと映る。対話と抑止の両輪を整える姿勢がにじむ。
日本にとって南シナ海は遠い海ではない。シーレーンとしての重要性はエネルギーと物資の循環に直結する。だからこそ、法の支配と国際法の遵守を土台に、多国間での信頼醸成を積み上げる必要がある。海の安定が貿易の呼吸を整え、地域の成長に確かな鼓動を与えるからだ。
一方で、過度な緊張が連鎖すれば偶発的な衝突のリスクも増す。日本は能力支援と外交対話を重ね、当事国の自助と地域の連携を結ぶ要に徹するほかない。サミットで交わされた数多の言葉は、海の秩序をどう守るかという単純で深い問いに収束していく。次の会合までに各国が何を積むかが問われている。
