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EU欧州委員会は2025年12月16日、新車のエンジン車を2035年から原則禁止する「100%削減」の方向性を緩め、CO2排出の削減目標を90%に改める案を示した。規制の最終決定はこれからだが、日本のメーカー各社は、欧州での車種配分や生産体制をどこまで組み替えるべきか、前提の置き直しを迫られている。
「売れる車を残せる」現場の計算が変わる
欧州の販売戦略は、充電インフラや電池コストの先行きとセットで組み立ててきた。規制が和らげば、電気自動車（EV）に寄せ切るだけでなく、ハイブリッド車（HV）や外部充電できるプラグインハイブリッド車（PHEV）を含む“混在”を長めに維持できる余地が広がる。結果として、部品調達やライン改造を一気に進める負担が薄まり、複数の車種を並行して作る判断がしやすくなる。
EUが示した「90%」の落としどころ
欧州委の案は、2035年時点で新車のCO2排出を2021年比で90%減らすことを軸に、残る10%は低炭素の素材利用や持続可能燃料などで埋める考え方だ。合成燃料のe-fuelは、CO2と水素から作る燃料で、理屈の上では燃焼しても差し引きの排出を抑えられるとされる。もっとも、制度化にはEU加盟国と欧州議会の手続きが必要で、条件設計次第で“使える抜け道”にも“高コストの免罪符”にもなり得る。
日本勢に残る課題は、規制より「競争の速度」
禁止の看板が外れても、CO2削減のハードルが消えるわけではない。クレジットや代替燃料の調達、車両の実用燃費といった現実的な制約が、結局は価格と収益性に跳ね返る。さらに欧州市場では、中国勢を含むEVの値付けが競争軸になりつつあり、選択肢が増えた分だけ「どこに投資を集中するか」の難度が上がる。日本メーカーは、EVとHVの両にらみを続けつつ、制度の最終形が固まるまで“作れる自由”を“売れる確信”に変えられるかが問われる。
