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欧州連合（EU）と主要7カ国（G7）が、ロシア産原油の輸出を巡る制裁の強化に動いている。既存の価格上限制裁に代え、欧米の海運会社や保険がロシア産原油を運ぶこと自体を禁止する構想だ。実現すれば、ウクライナ侵攻の資金源とされるロシアの石油収入を直接狙い撃ちにしつつ、世界の輸送とエネルギー市場にも新たな負担をもたらす。
海運禁止が揺さぶるタンカーと新興国の原油調達
関係筋によると、EUとG7はロシア産原油の海上輸送に西側の船舶や保険を使うことを段階的に認めてきた価格上限制裁を見直し、原則としてこうしたサービスを全面的に止める案を協議している。制裁を回避する「抜け道」として育ってきた仕組みを断つことで、ロシアの輸出収入をさらに削ろうとする狙いだ。
ロシア産原油の一部は現在も、ギリシャやキプロス、マルタなどに拠点を置く海運会社のタンカーや、西側の保険会社を通じてインドや中国に運ばれている。こうした輸送が禁止されれば、取引の一部は老朽船を中心とした「シャドーフリート」と呼ばれる非透明な船隊に移るとみられ、安全性や環境リスクの高まりを懸念する声もある。
一方で、ロシア産原油を割安価格で調達してきた新興国にとっては、利用できる船舶や保険の選択肢が限られれば、運賃や保険料の上昇につながりかねない。輸入先をいきなり切り替えることが難しい国も多く、制裁の強化がエネルギー安全保障とどのように折り合うのかが問われている。
価格上限制裁の限界と、2026年に向けた新たな駆け引き
ロシア産原油への価格上限制裁は、2022年にG7などが導入し、一定の上限価格以下であれば西側の海運や保険を利用できる仕組みとして設計された。しかし、その後ロシアは制裁を受けない国籍のタンカーや保険への依存を強め、上限価格を守らない取引も増えたとされる。こうした経緯から、価格管理よりもサービスそのものを禁じるべきだとの議論が強まっている。
EUでは、海運サービスの禁止を含む新たな対ロ制裁パッケージを2026年初めにまとめる構想が浮上しており、その一部として海運全面禁止案が組み込まれる可能性があるという。EU側は正式提案の前にG7としての足並みをそろえることを重視しており、今後の協議では日本を含む各国が、自国のエネルギー事情と制裁の実効性をどう両立させるかが焦点になる。
EUはすでに、ロシアの「シャドーフリート」に属するとされる多数のタンカーを制裁対象に加え、港湾への入港やサービス提供を禁じる措置を段階的に拡大してきた。それでもロシア産原油の輸出量は大きく減っておらず、価格上限制裁を続けるか、海運禁止に踏み込むかを巡っては、ロシアの財政への打撃と世界のエネルギー価格への影響をどう天秤にかけるかという難しい判断がつきまとう。
制裁の網を海運サービスにまで広げる発想は、ロシアの戦費を削る有力な手段と期待される一方で、そのコストを誰がどの程度負担するのかという問いを各国の政策担当者に突きつけている。
