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秋雨のブリュッセルで各国首脳が顔を合わせた2025年10月23日、EUは今後2年間にわたりウクライナの財政を支える方針で一致した。一方で、ロシアの凍結資産を防衛資金に活用する決定は先送りとなり、資金調達の解を巡る綱引きが続いている。同日までに米国はロスネフチとルクオイルへの制裁で石油収入を締め上げ、翌24日にはロンドンで欧州主導の「有志連合」会合が開かれる見通しだ。資金と兵器、二つのパイプをどう太くするかが焦点に浮かぶ。
ブリュッセルの逡巡、続く資金の段取り
会場前に報道陣のざわめきが残る中、EU首脳は2025年10月23日の会議で、ウクライナが自衛を続けるための予算と軍事支援を今後も規則的かつ予見可能に供給する姿勢を打ち出した。結論文書は、2026〜2027年の「差し迫った財政ニーズ」への対応を明記し、各国が防空や大型弾薬など装備面の拡充を急ぐ必要性も強調した。政治の歩調は速くはないが、資金の息切れは避けるという意思がにじむ。
首脳陣は欧州委員会に対し、ウクライナの資金需要評価に基づく複数の支援オプションを速やかに提示するよう招請した。2025年の対ウクライナ予算支援は計205億ユーロで、そのうち65億ユーロはウクライナ・ファシリティ、140億ユーロはロシア凍結資産の利子を原資にしたG7のERA枠組みから拠出されたと整理されている。累計支援額は戦争開始以降で1775億ユーロに達し、欧州の「長期戦の覚悟」を物語る数字と映る。
ただし核心の一つ、凍結ロシア資産の本体を防衛融資に活用する案は、法的・金融リスクの洗い出しが終わらず、12月の次回会合に持ち越された。文言は「EU法の範囲で、ロシアが侵略を終え損害を賠償するまで資産を凍結し続けるべきだ」と釘を刺すにとどまる。制度設計を急ぐ現実路線と、法の安定を守る慎重さ。そのせめぎ合いが、結論の一歩手前で足踏みしている構図だといえる。
米国は石油の急所を締める
一方、大西洋の向こう側では空気が変わった。2025年10月22日、米財務省はロシアの二大石油企業ロスネフチとルクオイルを制裁指定し、エネルギー収入の源流を直接狙い撃った。指定は関連子会社にも及び、クレムリンの戦費調達を阻む圧力を段階的に強める狙いが明確だ。財務長官は即時停戦を呼びかけつつ、必要なら追加措置も辞さない姿勢を示した。
米国の今回の一手は、価格上限や海運規制を補完し、収益の“胴体”に当たる企業活動を直撃する設計である。流通や決済、保険に広がる遵守負担は、ロシア側の輸出経路に新たな摩擦を生むとみられる。他方で、効果の濃淡は第三国の協調と執行の厳格さに左右される。買い手の出し入れが続けば輸送の抜け道は残る。圧力の持続性と包囲網の密度が試されている。
欧州が法的整合性を優先して資産活用の最終判断を留保する間、米国は資金源への直接介入で時間を稼ぐ。両者のアプローチは異なるが、目指す地点は同じだ。ロシアの戦費を細らせ、ウクライナの防空と財政の“底”を抜かないこと。複線的な圧力が、冬場の戦況と交渉の均衡にどう作用するかが次の焦点になる。
ロンドンで探る「強さによる平和」
24日午後、ロンドンでは欧州中心の「有志連合」が対面とオンラインを交えて集う運びだ。議長役の英政府は、ロシアの石油・ガスを市場から外す措置の強化、凍結されたロシア主権資産の取り扱いの“仕上げ”、そして長距離能力の供与拡大を各国に促す構えである。資金の蛇口と兵器の供給線を同時に太らせ、プーチン政権の戦争継続コストを跳ね上げる発想が透ける。
具体策として、英政府は今冬に向けて軽多目的ミサイル（LMM）140発の追加前倒し供与を打ち出した。国内産業の増産計画をテコに、ウクライナの防空を谷間なく支える狙いだ。会合には欧州各国の首脳やNATO事務総長、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加する見通しで、支援の「速度」と「持続性」をどう担保するかが大きな論点となる。
ブリュッセルは制度の持続可能性を磨き、ロンドンは現場の即応力を積み増す。二つの時計が噛み合えば、ウクライナの「息」を長く整えられるはずだ。逆にどこかが止まれば、戦場と市場で綻びが広がる。12月のEU首脳会議で資産活用の設計図が固まるのか、そして有志連合がどこまで踏み込むのか。冬の入口で欧州の意思が問われている。
