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イスラエル軍は4日、レバノン南部の2つの町で標的攻撃を行ったと明らかにした。作戦に先立ち、同軍はヒズボラ戦闘員が使用していたとされる建物2棟から住民を退去させ、さらに約1時間後には別の2つの町の住民にも建物から離れるよう命じている。国境地帯で繰り返される「まず避難、次に攻撃」というパターンは、南レバノンで暮らす人々の安全と日常をどう揺さぶっているのか。
南部の町で続く、相次ぐ避難命令
今回の作戦では、イスラエル軍がレバノン南部の2つの町にある建物2棟を名指しし、住民に退去を求めたうえで標的攻撃を実施したと説明している。軍はこれらの建物が、親イラン武装組織ヒズボラの戦闘員に使われていたと主張し、民間人を巻き込まないための措置だと位置づける。しかし突然の命令を受けた住民にとっては、家財を残したまま短時間で立ち去らざるをえない緊迫した場面となる。
軍のアラビア語報道官によれば、最初の避難命令からおよそ1時間後には、別の2つの町でも建物から退去するよう住民に指示が出されたという。こうした通告は、同報道官がX（旧ツイッター）などを通じてアラビア語で発信するのが通例だとロイターは伝える。短い猶予のなかで移動先を探す家族も多く、学校や商店が再開しても、いつ再び「退去せよ」というメッセージが届くか分からない不安が、南部の生活に影を落としている。
「警告付き攻撃」という論理と、その余波
イスラエル軍は近年、ヒズボラの軍事インフラを狙うとして、特定の建物や倉庫を事前に警告したうえで攻撃する「精密作戦」を繰り返してきた。Arab Newsなどによると、2024年11月の停戦合意後も同軍はレバノン各地で多数の「テロ標的」を攻撃したと説明し、ヒズボラが民家や市街地を盾にしていると主張している。他方で、国連レバノン暫定軍（UNIFIL）や国連安保理は、レバノン主権や民間人保護の観点から、度重なる越境攻撃に懸念を示してきた。
警告を出すことで民間人の犠牲を減らせるという論理は一定の説得力を持つが、現地では家や職場から繰り返し避難を強いられる生活が常態化している。Anadolu通信によれば、過去には南レバノンで100を超える町や村に退去命令が出され、多くの住民が国内の別地域へ移らざるをえなかったという。戦闘の激しさが一時より落ち着いた局面でも、「次の命令」を意識しながら暮らす限り、復興や帰還の計画は立てにくい。今回の標的攻撃も、限定的な作戦に見えて、国境地帯に住む人々の長期的な不安をさらに強めている。
参考・出典
- Israeli military issues evacuation order to buildings in two southern Lebanese towns ahead of strikes, spokesperson says
- イスラエル軍、過去1カ月間にレバノンで50以上の「テロ標的」を攻撃したと発表
- イスラエルがベイルート南部を攻撃、レバノンは停戦保証国に訴える
- Israel orders evacuation of 25 more towns in southern Lebanon
- Security Council Extends UNIFIL’s Mandate: Resolution 2790 (2025)
