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ベルリンの会見場で24日、ドイツ政府は、26日から予定していたヨハン・ワーデフール外相の中国訪問を見送ると明らかにした。中国側が王毅外相との会談以外の行程を確定できなかったためだという。メルツ政権発足後、初の閣僚訪中が延期となり、貿易と安全保障をめぐる独中の距離感が改めて浮かんだ。
静まる会見場に響いた「延期」の一言
24日の定例会見で、外務省報道官は「訪問は後日に延期する」と告げた。出発は26日、就任後初の中国訪問になるはずだった。だが、確認できたのは王毅外相との会談のみで、他の要人や機関との調整が整わなかったという。発表の言葉は簡潔だったが、準備を重ねてきた行程が白紙に戻る重みが会見場に漂ったと映る。
報道官は、中国によるレアアースを含む輸出規制への懸念にも触れ、「議題は多いが、今回の訪問は実施できない」と説明した。記者の問いが重なるなか、ワーデフール氏の出直しに含みを残しつつ、先方のアレンジ不足が直接の理由である構図がにじんだ。日程と議題の両輪が揃わなければ、象徴的な初訪中も実を結ばないという判断が透ける。
今回の決定は、単なるスケジュール変更にとどまらない。メルツ政権としての対中アプローチを外に示す初の舞台が消え、二国間関係の温度を測る機会も遠のいたからだ。ヨーロッパ最大の経済とアジアの大国のあいだで、準備段階の小さなつまずきが、相互の不信や猜疑を増幅させかねないという現実が浮かぶ。
貿易と安全保障、波立つ海で
背景には経済と安全保障の絡み合いがある。ドイツ側は、レアアースや半導体を巡る輸出規制の強化が産業へ与える影響を重く見る。外相は、サプライチェーンの安定や公正な通商の必要性を繰り返し訴えてきた。輸出管理のかじ取りは中国の主権領域だが、欧州の製造業にとっては生産の呼吸そのものに関わる。議場に持ち込みたかった論点は明確だったといえる。
安全保障でも視線は交錯する。外相は就任以降、ロシアの戦争を巡る中国の役割や、インド太平洋での行動を厳しく見てきた。海の自由や国際秩序の根幹を守るという言葉は、理念だけでなく物流と雇用の現実に直結する。相手が大国であるほど発言の温度は難しく、両国の「言葉の距離」が、会談アレンジの難度を押し上げた面も否めないとみられる。
それでも経済の糸は太いままだ。一部報道によれば、年初来の統計では中国が再びドイツの最大の貿易相手に返り咲いたとされる。依存を減らしながら関与を続けるという難題が、ベルリンの政策選択に影を落とす。延期は関係悪化の決定打ではないが、信頼を積み直す作業の一歩目が遠のいたことは確かだ。機械音の響く工場にも、波紋は静かに広がっている。
北京の手触りと、次の一手
北京からは別の空気も伝わる。中国外務省は24日の会見で、ワーデフール氏の発言に言及し、独中は包括的な戦略的パートナーであり、相互尊重と互恵の原則を強調した。混迷の世界で両国が安定の楔になるべきだというメッセージである。経済の結びつきと産業の補完性を土台に、関係の再構築を図る意思がにじむ。
もっとも、当日の公式説明では延期そのものへの直接の言及は見当たらない。発表のタイミングと会見の順番が交差し、双方の対外発信がずれた格好だ。現時点で確認されている範囲では、訪問の新たな日程は未定である。政治日程は流動的で、来月以降の国際会議の周辺で接点を探る可能性も残る。閣僚級の往来が再開すれば、実務協議の歯車も動きやすくなる。
「延期」は、関係を断つ言葉ではない。むしろ、言葉と行動を擦り合わせる時間を双方に与える。台湾や輸出規制という難題は消えないが、窓口は閉じていない。次にベルリンと北京が向き合うとき、どの論点から糸口をつけるのか。会談室の静けさの先に、対話の温度をどう取り戻すかが問われる。
