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12月3日午前の参議院本会議で、高市早苗首相が「経済あっての財政」を掲げ、財政の持続可能性に配慮しつつ戦略的に財政出動する考えを示した。すでに政府は総額21.3兆円規模の経済対策を打ち出しており、家計や企業はその効果と将来の負担を見極めようとしている。
物価高と将来不安、生活者が見る「戦略的財政出動」
家計の立場から見ると、政府が掲げる「戦略的な財政出動」は歓迎と不安が交錯する。LENDEXの意識調査では、高市政権の積極財政を評価する人が5割強いる一方で、政策の内容を十分に理解している層はおよそ6割にとどまるとされる。恩恵を実感する前に、将来の増税や年金への影響を気にする声も少なくないのが実情だ。
物価高が続くなか、政府はガソリン価格の抑制や所得減税、給付策など、目先の負担を和らげる政策を組み合わせている。光熱費や食料品の値上がりが続く家庭にとっては、当面の支えになる施策であることは間違いない。他方で、エネルギー価格や輸入物価は国際情勢の影響も大きく、国内の財政出動だけで完全にコントロールできるわけではないという制約もある。
今回の首相発言は、「経済成長を優先し、その果実で財政を立て直す」というメッセージでもある。だが成長の果実が十分に行き渡らないまま債務だけが積み上がれば、将来世代の負担は重くなる。生活者が本当に安心できるのは、短期の支援にとどまらず、教育や医療、子育てなど将来不安を和らげる分野に、どのような優先順位で資金を振り向けるのかが具体的に示されたときだ。
企業と財政、巨額対策はチャンスかリスクか
政府は11月、減税や補助金などを含めた総額21.3兆円の経済対策を決定し、高市政権の積極財政路線を鮮明にした。成長分野への研究開発支援や設備投資の後押しが柱で、企業の収益や賃上げにつなげる狙いである。公共投資や補助金を通じて需要を下支えしつつ、民間の投資マインドを喚起しようとする構図だ。
一方で、企業経営者の中には、巨額の対策が長期的な金利や為替にどう響くかを慎重に見る向きもある。国債発行が膨らめば、景気や海外金利の動き次第で調達コストが上がりかねないからだ。成長投資の後押しと財政規律の維持、その両立ができるかどうかが、今後の設備投資や国内回帰を進めるかどうかという判断に影響を与える局面に入っている。
海外に目を向ければ、米欧もインフレと景気下支えの両立に苦慮してきた。日本は長く低金利に支えられてきたが、国内総生産に対する政府債務の比率は主要国の中でも突出して高い。高市政権の積極財政は、企業にとって新しい需要を生み出す機会であると同時に、日本という市場自体の信頼性を試す取り組みでもあり、その成否は国際的な資金の流れにも影響を及ぼしうる。
PB目標見直しと市場の信認、残された分岐点
高市首相は、財政健全化の指標である基礎的財政収支(PB)について、単年度ごとの黒字達成にこだわる従来の運用を見直し、数年単位でバランスを確認する方向性を示している。あわせて、中期的に債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、市場の信認を確保する考えも繰り返している。成長に必要な支出の余地を広げつつ、最低限の「安全柵」は残そうとする発想である。
これに対し、財政制度等審議会など専門家の側からは、大規模な財政出動が続く状況でもPBの状況を丁寧に点検し、予算編成には細心の注意を払うべきだとの意見が出ている。巨額の債務を抱える日本では、一度市場の信頼を失えば金利上昇が急速に進む恐れがあり、慎重論は根強い。首相が強調する「経済あっての財政」という考え方も、市場との対話を前提にして初めて機能する。
目先の景気下支えと将来世代の負担軽減、その折り合いをどう付けるか。成長のための投資と、社会保障や防災など生活基盤への支出をどう優先順位づけるか。今回の発言は、その設計図をこれから詰めていく出発点にすぎない。
