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厚生労働省が、分娩費用を公的医療保険で全額賄う案を社会保障審議会に示す。通常の出産を事実上「自己負担ゼロ」とする構想で、早ければ来年の通常国会に関連法案を出し、27年度以降の実施をめざすという。出産費用の高騰が家計を圧迫するなか、誰がどのように負担を分かち合うのかが改めて問われている。
家計にとっての「出産ゼロ円」の意味
現在、正常分娩は病気とみなされず、公的医療保険の対象外だ。その代わりに出産育児一時金50万円が支給されるが、出産費用は値上がりを続け、厚労省などの調査では2022年度の全国平均が約48万2000円、差額ベッド料などを含めれば50万円を上回る水準とされる。都市部では60万円台という例もあり、自己負担の重さから出産をためらう声は少なくない。
分娩費用を保険適用し自己負担をなくす案が実現すれば、標準的な出産に限っては「持ち出しがほぼない」状態に近づく。子どもを望みながら費用面で踏み切れなかった世帯にとって、数十万円規模の不安が和らぐ効果は大きい。一方で、お祝い膳や個室利用など、妊産婦が選ぶ追加サービスをどこまで公費で賄うかは、今後の議論に委ねられている。
欧州では出産費用の多くが公的保険でカバーされる国が多いが、それでも子育て費用や住宅、働き方の問題は別途の課題として残っている。日本でも出産の無償化は少子化対策の一つにすぎず、保育や教育、働き方改革とあわせて家族の生き方を支える仕組みが問われる。家計を守りつつ、どこまでを社会全体で負担するのかという軸が重要になる。
財源と医療現場、負担の移し替えは
厚労省案は、4日に開かれる社会保障審議会の医療保険部会に提示され、来年の通常国会への法案提出を視野に入れる。2026年度までに制度設計を固め、27年度以降の実施を目指す見通しだ。出産費用を保険給付とする場合、財源は保険料や公費で賄われることになり、現役世代や企業、国・自治体の負担の配分をどう決めるかが大きな論点となる。
出産を診療報酬で一律に評価する仕組みになれば、医療機関の収入構造は大きく変わる。テレビ朝日や日本テレビなどの報道では、産婦人科の医師から、保険適用で単価が下がれば経営が成り立たず、分娩の取り扱いをやめる施設が増えかねないとの懸念も示されている。とくに産科医の少ない地方では、無償化がかえって「産める場所の減少」につながらないよう、慎重な制度設計が求められる。
出産費用の無償化は、これまで妊産婦と家族が負ってきた負担を、社会全体に広く移し替える試みだ。将来の子ども世代を支えるための投資でもある一方で、医療現場や保険財政にしわ寄せが集中すれば持続性を欠く。本格的な少子化対策とするには、負担の担い手と範囲を丁寧に説明し、世代と立場を超えて納得できる落としどころを探る作業が避けて通れない。
