米内務省がアラスカ開発制限を撤回　北極圏の資源産業に追い風、環境との両立が焦点に

2025.11.14

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2025年11月14日、米内務省がアラスカ州の政府保有地での石油・ガス開発に課していた2024年の制限を撤回する最終規則を公表した。トランプ政権の「国内増産」路線を押し出す動きで、北極圏の産業と地域の財政に追い風となる一方、自然保護と先住民の暮らしの両立が改めて問われる局面に入った。

制限撤回の中身

今回の決定は、アラスカ州国家石油保留地（NPR-A、連邦政府が管理する約2300万エーカーの資源地域）に適用された前政権の規則を対象とする。内務省は「規制を元に戻し、責任ある開発を進める」として、同地域の管理方針を再び開発寄りに切り替える。

前政権の規則は、NPR-Aのうち1060万エーカー（430万ヘクタール）で新規の採掘権を禁じ、さらに200万エーカー超で活動を制限していた。撤回により、この広大な面積での鉱区設定や計画策定に再び道が開く。

バーガム内務長官は声明で、アラスカ北方の雇用創出と米国のエネルギー安全保障の強化を挙げ、「常識的な管理に立ち返る」と強調した。政権の優先課題である国内生産の拡大に沿う表明で、規制撤回の意義を経済と安全保障の観点から位置づけた。

2024年の規則は、気候変動の影響や野生生物・地域社会への配慮を背景に、環境的に脆弱な区域での新規リースを抑える狙いがあった。今回の撤回は、その「保護を先に置く」前提から「開発を前提に管理する」方向へと舵を切るもので、政策の重心が入れ替わる。

内務省は、撤回の根拠として法令との整合性や行政手続きの見直しを示し、1970年代の枠組みに近い管理へ戻す方針を示した。これにより、土地利用の調整は複数用途（開発・保全・レクリエーションなど）のバランス重視へと再編される見通しだ。

最終規則は官報に11月17日に掲載される予定で、掲載後は新方針に基づく手続きが段階的に走り出す。鉱区の設定、環境審査、地元協議の順で具体化が進み、企業と地域の計画づくりが再起動する流れになる。

地域からは歓迎の声も上がる。アラスカ先住民の団体は、インフラや開発が税収を生み、医療や教育など基礎サービスの財源になると評価した。雇用と税基盤の拡大を見込む実利が、政策転換を後押ししている。

一方で、環境団体は生態系や地域の伝統的な生業（ subsistence ）への影響を懸念し、保護規則の撤回に強く反発している。保全区域の縮小は不可逆的な損失につながるとの指摘もあり、将来世代への責任をどう担保するかが論点として残る。

資源の潜在力と環境の持続性、その間を行き来する調整は長い時間を要する。足元では政策が開発寄りに傾いたが、許認可や訴訟、市場の変動が折り重なり、現場の歩みは一歩ずつになるだろう。