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株式会社ブロードバンドタワーとNTT東日本は2025年11月17日、東京と北海道のデータセンターを次世代光ネットワーク「IOWN APN」で直結する共同実証を始めた。2026年3月末までの期間中、およそ1000km離れた拠点をあたかも1台のストレージのように扱えるかを確かめる。企業が抱えるバックアップや災害対策、ランサムウェア対策の負荷をどう軽くできるのか――遠隔地のサーバールームで回る冷却ファンの先に、そんな問いが突きつけられている。
現場の管理負荷を「距離無視のストレージ」でほぐせるか
企業のシステム担当者は、重要なデータを守るために拠点ごとにバックアップや災害対策、マルウェア対策を組み合わせてきた。しかし拠点が増えるほど仕組みは複雑になり、設定変更や障害対応のたびに各地の環境を個別に追いかける必要がある。人的リソースが限られる中小企業や自治体では、この運用負荷が事業継続のボトルネックになりつつある。
今回の実証では、東京の「ブロードバンドタワー 新大手町サイト」と札幌市内のNTT東日本データセンターをIOWN APNで結び、両地点のストレージを単一のボリュームとして扱う。利用者から見ると、どこに保存されているかを意識せず、最寄りの拠点から同じデータにアクセスできるのが特徴だ。東京側で編集した映像素材を、ほとんど遅延を感じずに北海道側でも扱えるかといった、クリエイティブやAI処理の現場の使い勝手も検証対象に含まれる。
一方で、物理的な距離を意識せずに運用できるということは、障害やサイバー攻撃の影響範囲も広がりうることを意味する。そこで両社は、長距離構成のままデータ保護機能やランサムウェア対策機能が十分に機能するかを入念に確認する計画だ。「距離を意識しない運用」と「万一の切り離しやすさ」をどう両立させるかが、現場にとっての鍵となる。
IOWN APNが変えるデータセンターの「隣接」の定義
これまで大容量ストレージ同士をリアルタイム連携させる場合、遅延を抑えるため同じ建物やキャンパス内に機器を置くのが常識だった。今回用いられるIOWN APNは、ネットワーク区間のほぼ全てを光のまま伝送することで、大容量かつ低遅延な通信を長距離でも維持できるのが売りだ。NTTグループはすでに、日本と台湾を結ぶ約3000km区間で安定した低遅延通信を実証しており、その技術が国内データセンター間の連携にも応用されつつある。
ブロードバンドタワー側はストレージサービスの提供と性能検証を担い、NTT東日本側は札幌のデータセンターとIOWN APNの回線を提供する役割を負う。検証では、まず長距離で構成したストレージが安定稼働するかを確認し、その上で映像制作やAI解析といった重い処理を想定したパフォーマンステストを行う。ここで十分な速度と応答性が得られれば、「遠隔地に置いたデータを手元同然に扱う」という新しいアーキテクチャが現実味を帯びる。
NTT東日本は、GMOインターネットグループと組みGPUクラウドとストレージをIOWN APNで結ぶ実証や、三菱電機と3次元点群データを遠隔解析する実証など、別分野でも類似の取り組みを進めてきた。今回のブロードバンドタワーとの共同実証は、その延長線上で「ストレージそのものを広域に分散させる」というテーマに踏み込む位置づけにある。単なるネットワークの高速化にとどまらず、データセンターの設計思想を変える試みと言える。
地方分散と災害対策、そして新たな運用リスク
札幌側のデータセンターは、2026年に開設予定の「石狩再エネデータセンター」を想定した拠点として位置づけられている。北海道では道とNTT東日本が連携し、IOWNを体感できるデモや実証を通じて、再生可能エネルギーとデジタル産業の集積を目指す動きも進む。首都圏と再エネ電力に恵まれた地方データセンターを高速・低遅延で結ぶことができれば、電力コストや災害リスクを分散しながら、都市部の利用者にとっての使い勝手を維持する選択肢が広がる。
とはいえ、長距離をまたいだ単一ファイルシステムは、設計次第ではトラブル時の影響範囲を広げかねない。ランサムウェアにより共有ストレージ全体が暗号化されると、東京と北海道の両方で業務が止まる可能性もある。そのため今回の実証では、バックアップの分離度合いやスナップショットの取り方など、セキュリティ機能の実効性を細かく検証する計画だ。距離を意識しない運用の裏側で、どこまで論理的な「境界」を残すのかが、今後の設計議論の焦点になる。
IOWN APNを使った広域ストレージは、災害分散や地方分散といったメリットをもたらす一方で、ネットワークコストや運用スキル、ベンダー選定など新たな判断材料も生む。今回の実証は、こうした利点と負担のバランスを現場レベルで見極めるための試金石だ。データセンターを「一極集中から分散した一体運用」へと移行させる流れの中で、誰がどのコストとリスクを引き受けるのか。その答えを探るプロセスは、実証期間が終わった後も続いていくだろう。
参考・出典
- 次世代通信基盤「IOWN」を活用した、距離的制約を超える新たなデータプラットフォームの共同実証を開始 | NTT東日本株式会社のプレスリリース
- IOWN APNにおいて、任意の場所から、必要な時だけタイムリーにAPNに接続する基本技術実証に成功 | ニュースリリース | NTT
- 『GMO GPUクラウド』と低遅延回線『IOWN APN』を活用した次世代分散型AIインフラの技術実証を開始 | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本
- 北海道初!IOWN体感デモ・実証の実施 | NTT東日本株式会社のプレスリリース
- 次世代通信基盤「IOWN」を活用した、距離的制約を超える新たなデータプラットフォームの共同実証を開始(NTT東日本)
- NTT東×ブロードバンドタワー、IOWNを活用した距離的制約を超えるデータプラットフォームを実証(マイナビニュースTECH+)
- NTT東日本とブロードバンドタワー「IOWN」活用した共同実証開始(EnterpriseZine)
