イスラエル当局がUNRWA施設を捜索　固定資産税巡り備品差し押さえ

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2025.12.09

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イスラエル当局は８日、今年初めから空きビルとなっていた国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）の東エルサレム施設に警察と市職員を送り込み、建物内を捜索して備品を押収した。市当局は固定資産税の未払いに対する差し押さえだと説明する一方、UNRWAや国連は免税と施設の不可侵を定めた国際条約に反すると強く抗議しており、人道支援と主権の衝突が改めて浮かび上がった。

空のUN施設で起きた「税徴収」劇

地元メディアや国連の説明によれば、襲撃は早朝に始まり、警察車両やオートバイに加え、トラックやフォークリフトがUNRWA本部跡地の敷地内に入り込んだ。建物の通信回線は切断され、家具や情報機器などの資産が運び出されたうえ、屋上に掲げられていた国連旗は降ろされ、代わりにイスラエル国旗が掲揚されたという。

この施設は、イスラエルがUNRWAの活動を禁止し、すべての拠点から退去するよう命じたことを受け、今年初めから職員不在となっていた。それでも国連側は、敷地は依然として国連の施設であり、国連憲章や「国連の特権及び免除に関する条約」に基づき、捜索や差し押さえから保護されるべきだと主張する。

国際社会にとって象徴的だったのは、紛争地で人道支援を象徴してきた水色の国連旗が降ろされ、占領・併合をめぐり立場が割れる東エルサレムでイスラエル国旗が代わりに翻った場面だ。現地のパレスチナ人や外交関係者の間では、単なる一つのビルをめぐる措置にとどまらず、国連機関の活動空間そのものを狭める動きではないかとの懸念が広がっている。

国連特権と「未払い税」主張、対立の根にあるもの

エルサレム市当局は、UNRWAが約1,100万シェケル（約3.4億円）の固定資産税を支払っておらず、警告や支払い要請を繰り返しても応じなかったため、通常の債権回収手続きとして差し押さえに踏み切ったと説明する。警察側も、市役所の徴収官に同行したものであり、政治的判断ではなく法執行だと位置付けている。

これに対しUNRWAと国連は、国連施設は国内法上の課税対象ではなく、捜索や差し押さえを禁じる特権と免除があると反論する。UNRWAのラザリーニ事務局長は、通信遮断や資産押収を伴う今回の強制立ち入りを「国連施設の不可侵を無視した行為」だと非難し、グテーレス事務総長も「無断侵入」を強く批判してイスラエルに原状回復を求めた。

背景には、UNRWA職員の一部がハマスと関係していたとするイスラエルの主張と、それを受けた対UNRWA立法や活動禁止措置がある。一方で、UNRWAはガザやヨルダン川西岸、周辺諸国で約600万人のパレスチナ難民に教育や医療を提供してきた基幹的な機関でもあり、その活動をどう維持するかは国際社会共通の課題だ。空になった一つの本部ビルをめぐる今回の衝突は、占領地で人道支援を担う組織と主権国家との関係ルールをどこまで守れるのかという、重い問いを突き付けている。

空のUN施設で起きた「税徴収」劇

国連特権と「未払い税」主張、対立の根にあるもの

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