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雨上がりの霞が関に人が流れ込む朝、掲示板に並んだ数字が小さく跳ねた。2025年10月24日、総務省が公表した9月の全国消費者物価指数（生鮮食品を除くコアCPI）は前年比2.9％上昇となり、4カ月ぶりに伸びが拡大した。エネルギー価格の反転が全体を押し上げ、物価の粘り強さを映す。先行きの金融政策や賃金・物価の循環を占う節目が浮かぶ。
エネルギーの反転が押し上げに転じ、コアCPIは4カ月ぶり拡大
9月のコアCPIは前年比2.9％上昇で、8月の2.7％から上昇幅が広がった。エネルギーは2.3％上昇と、3カ月ぶりにプラスへ反転した。昨年に実施された電気・ガス代の補助金が薄れる「反動」が押し上げ寄与として表れ、現在も続く補助の押し下げ効果を上回った格好である。価格改定の波が鈍る場面もあるが、基調としての持ち堅さは残ると映る。
一方、家計が実感しやすい食料は落ち着きが見え始めた。生鮮食品を除く食料は7.6％上昇と2カ月連続で伸びが鈍化した。中でも米類は49.2％上昇と、前月の69.7％から伸びが縮小した。天候要因や流通の調整が響いたとみられるが、負担感は依然として重い。品目間でばらつきが残る現状は、家計の買い回りや節約行動の変化にも直結しているように映る。
物価の基調を測る指標でも小幅な落ち着きが出た。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは3.0％上昇となり、2カ月連続で伸びが縮小した。もっとも、3％台は6カ月連続で、根強いサービス価格の上昇が下支えしている。総合指数も2.9％上昇と伸びを拡大しており、全体としては高めのインフレ状態が持続している構図だ。
市場のまなざしは月末会合へ、賃金とサービス価格の足取りを測る
賃金の動向を反映しやすいサービス価格は1.4％上昇で、前月の1.5％からやや鈍った。今春の賃上げは高い伸びが続いたが、消費回復の足取りや企業の価格転嫁の度合いは業種で差がある。家計は光熱費の反転をにらみつつ、外食やレジャーの支出を調整する動きが広がっている。秋の行楽期に入る中、需要の息切れが出るかどうかが次の焦点となる。
日本銀行は直近の会合で、経済・物価の見通しが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて金融緩和の度合いを調整していく方針を示している。月末の決定会合を前に、市場では早期の利上げ再開観測がくすぶる一方、物価の加速感には慎重な見方も根強い。エネルギーの反転は一時的な押し上げにとどまるのか、基調の強さを裏づけるのか、判断はなお難しい局面にある。
民間エコノミストからは「物価のモメンタムは維持されたが加速は限定的」との声が出ており、先行きのコアCPIは鈍化方向との見立てもある。為替や輸入価格の変動、公共料金の動き、そして賃金の定着度合いが重なり合い、金融政策の選択肢を複雑にしているのが現状だ。今回のCPIは、利上げの地ならしを急がせる材料でもあり、慎重姿勢を支える根拠でもあるといえる。
