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防衛省は、日本周辺空域を飛行する中国の無人航空機に対し、自衛隊機が行う緊急発進（スクランブル）で無人機を活用できるかどうか、2026年度から検証に乗り出す。中国側の運用が本格段階に入ったとの危機感から、より効率的で実効性の高い対領空侵犯措置を探るのが狙いで、関連経費として26年度予算の概算要求に11億円を盛り込んだ。無人機スクランブルは、現場の負担と抑止力をどう変えるのかが問われている。
スクランブル現場の負担と無人機の可能性
現在の対領空侵犯措置では、レーダーなどで不審な航空機を捕捉すると、航空自衛隊が戦闘機を緊急発進させ、接近して確認・監視するのが基本だ。防衛白書によれば、近年の緊急発進の多くは中国機が対象で、東シナ海から太平洋へと活動範囲も広がっている。有人戦闘機は高性能だが、燃料や整備の負担が大きく、長時間の警戒飛行には向かない側面がある。
一方、中国軍は偵察や攻撃能力を備えた無人機の飛行を日本周辺で増やしており、試行から運用段階に移ったと日本側はみている。無人機は比較的安価に長時間飛べるのが強みで、もし自衛隊側も無人機をスクランブルに活用できれば、パイロットの連続待機や夜間出動の心理的負担をある程度軽減できる可能性がある。ただ、遠隔操作で相手機に接近し、領空侵犯の有無を即座に見極めるには、高性能センサーや通信の安定性など、新たな要件も突き付けられる。
防衛省が検証で見極めたい費用対効果とリスク
今回の検証は、まず無人機がスクランブル任務に技術的・運用的に耐えうるかを確かめる段階だと位置付けられている。防衛省は26年度からの試行で、無人機を迅速に発進させられるか、遠方で飛行する他国機を継続的に監視できるかといった点を確認する考えだ。背景には、戦闘機による対応が続けば、燃料費や機体寿命、整備人員の確保など、コスト面で「無人機側に分がある」との問題意識がある。
同時に、無人機は相手機に信号弾で警告したり、必要な場合に攻撃したりする能力を前提としていない機種も多い。対領空侵犯措置は警察権の一環として行われるため、最終的な判断や責任の所在をどこまで機械依存にできるのかという法制度・運用面の検討も欠かせない。防衛省は、11億円の検証費で得られる知見を踏まえ、どの任務を無人機に任せ、どの局面は引き続き有人戦闘機が担うのかという役割分担を見極めていくことになるだろう。
