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官邸の会議室に資料束が積まれ、委員が次々と意見を述べた。政府は2025年11月10日、日本成長戦略会議の初会合を開き、総合経済対策に盛り込む重点施策の骨格を共有した。高市首相は大胆な発想での検討と、補正や税制を含む早期実行を指示。供給構造の強化を軸に、経済安全保障と成長投資を同時に進める方針が動き出した。
官邸で始動した成長戦略会議
会議は2025年11月10日、総理大臣官邸で開かれた。日本成長戦略会議は、成長戦略本部の下で具体策を練る新たな枠組みだ。初回は運営方法に加え、官民連携での投資促進や、総合経済対策に盛り込むべき重点施策案を議論。高市首相は従来の枠組みにとらわれない検討を求め、議論を先へ押し出した。
首相は、供給構造の抜本的強化を狙い、官公庁の調達や規制改革など需要の創出策と、複数年度にわたる予算措置を組み合わせて民間投資を後押しする考えを示した。投資の予見可能性を高め、設備や人材への意思決定を迷わせない設計を打ち出す狙いだ。
さらに、関係閣僚には必要となる補正予算の確保や税制の実現を指示し、対策の取りまとめを待たず着手できるものから直ちに進めるよう求めた。有識者には翌夏の戦略取りまとめへ一層の協力を要請し、政策の実装へと歩を進めた。
経済安全保障を軸に、造船・資源・半導体を押し出す
議論の焦点には、国内造船の競争力強化が据えられた。老朽設備の更新やデジタル化の遅れは重く、巨大案件を安定的に受注できる体制づくりが鍵となる。工程の見える化や共同受注の仕組み、造船所の設備投資を後押しする支援設計など、再生に向けた道筋づくりが提起された。
資源・エネルギー安全保障も柱だ。レアアース（希土類）の中国依存を下げる狙いで、南鳥島周辺海域での開発加速が議論の文脈に置かれた。GX（グリーントランスフォーメーション：産業や社会を脱炭素型へ転換する動き）に不可欠な磁石材料の確保は、電動化の土台を固める意味を持つ。
同時に、AI（人工知能）や次世代半導体といった基盤技術への支援も欠かせない。設計から量産までの国内エコシステムを厚くし、海外ショックに揺れにくい供給網へ近づける。人材の流動化や大学発の研究開発の事業化支援を束ね、産業横断の波及を狙う構えだ。
民間投資を動かす仕掛け
重要なのは、政策と資金のタイミングを合わせることだ。政府は複数年度のコミットメントで投資の見通しを示し、需要創出策と規制改革を同時に回す考えを示した。単年度主義の壁を越えて設備投資を促すことで、供給力の底上げを狙う。
加えて、人材育成や賃上げ、サイバーセキュリティーの底上げなど、分野横断の課題にも目配りする。技能移転の仕組みを整え、現場と研究をつなぐ人材を確保することが、造船や半導体の現場で同時に効く。企業が踏み出しやすい制度環境へ、行政の手当ても問われる。
会議体は翌夏に成長戦略全体の取りまとめを予定し、前倒し可能な施策は経済対策に先行計上する方針だ。初会合で示された進め方は、設計と実行を並走させる段取りである。工程を切らさず改善を重ねることで、成果の見える化が進むはずだ。
